第5章 時代
「マリーーーー!」
ただならない様相で駆けてきたあたしを見て、マリーはぎょっとしたように動きを止めた。
「どうしたの、そんな…顔して」
そんな、って、今何を言おうとしたのよ。
一瞬問い詰めようかと思ったけど、今はそんなことより。
「これ、見てよ!!」
ばん!っと世経を広げる。
問題の、一面を。
広げたせいでマリーの表情は見えなかったけど、続くマリーの言葉は逆にあたしを驚かせるものだった。
「ふーん。大変なことになってるね」
タイヘンナコトニナッテルネ…?
大変なことになってるね!?
「そ、それだけ!?」
新聞を取り下げ、思わず素っ頓狂な声をあげてマリーを凝視する。
だって。
こんな重大事件なのに。
白ひげが死んだと言うことは、彼の縄張りが失われるということだ。
彼がいたことにより保たれていた世界の均衡が崩壊する。あたしたちの生活にだって少なからず影響が出るに違いない。
それを、この男は…。
「まあ、みんないつかはこうなるって分かってたでしょ。栄華は必ず衰退する。永遠に続くものなんてないんだよ。かの有名なゴールド・ロジャーが死んだ時もそうだったように、ね」
飄々と言ってのけるマリー。
達観しているというのか、冷めているというのか。