第1章 夢
「いいから早く帆をたたむの手伝ってこい」
傍を通った男があたしの頭をポンっと叩きながら言う。
実際のところ、重たい腕一本をドンと置かれるので地面に沈み込むかと思ったけれど。本人は軽くのつもりだろうけど、全然ポンじゃない。
そんなことを思いながら返事は元気にして甲板に上がる。
そして、メインマストに向かって伸びているシュラウド(ロープのはしごみたいなものね)を身軽に頂上まで駆け登った。
下のロープは他の乗組員が解いてくれているので後は一番上のロープを縛るだけだ。
カモメが飛んでる。風も穏やか。
いい天気だ。
こんな日にこの船に乗って出航できたらどんなにいいだろう。
肺いっぱいに朝の新鮮な空気を吸い込んでから、あたしは一気に梯子を駆け下りた。