第5章 時代
「なになに?どうしたの?」
横からマリーが近づいてくる。
「この船、ミカヅキ島へ行かないんだって…。あたしたち、乗る船を間違っちゃったみたい…」
マリーも流石に驚いたようで、見つめあったまま2人の間にしばし沈黙が流れた。
切り替えはマリーのほうが早かった。
「仕方ないね、じゃあ次の島で降りよう。おじさん、次の島はどのくらいで着く?」
「スワロー島までか。そうだな…だいたい2週間ってとこか。」
に、2週間…?
めまいがする。
とっさに今すぐ引き返して!と叫びたくなったけど、まさかあたしたちのために港に戻ってくれるわけもなく。
とりあえず一番近いスワロー島までの代金を支払った。
「ミカヅキ島に帰るのはいつになるの…」
見るからに落ち込むあたしに、マリーもさすがに俯いて黙り込んだ。
この船に乗り込んだことに罪悪感を抱いているのかな。強引に引っ張ってきたのはマリーだし。
俯くマリーを見ていると、なんだからしくなくて落ち着かない気持ちになる。
マリーだってわざと間違ったわけじゃない。
これはどうしようもないことだ。
「運が悪かったね」
独り言のように言う。別に返事を求めていたわけではなかったけど、マリーはゆっくり顔をあげた。
「…そうだね。運が悪かったね」