第5章 時代
笑顔を取り戻したあたしの顔がまた凍りつくまでさほど時間はかからなかった。
ミカヅキ島から出発した時は、船乗り以外の乗船者はあたし1人(とジョナサン)だけだったけれど、この商船にはあたしたちのような乗船客が少なからず乗っていた。
みんなそれぞれの目的地を船乗りに知らせてそこまで乗せてもらうのだ。
そしてその代わり乗船料をいくらか支払うことになっている。
乗組員の1人が行き先を聞いて代金を回収しに来るから、その時に払えばいいらしいんだけれど。
「……ミカヅキ島?」
あたしたちも他の乗客にならって、代金を回収しにきたおじさんに行き先を知らせる。
そして、そのおじさんの怪訝な顔で何やらおかしいと気づいたのだった。
「あの、えっと…。ミドル王国の西の…、三日月の形をした島があると思うんだけど」
不安になってしどろもどろ答えると、おじさんはやっと納得したように頷き、次いで気の毒そうに首を振った。
「この船はそっちへは行かねぇよ。これはミドル王国から出て南の方へ行く船だ」
言われて唖然とする。
「え?で、でも!…港の人がこの船だって教えてくれたのに…!」
そう、確かに港で話を聞いたおじいさんはこの船を指さしたのだ。ミカヅキ島へ行くならあれに乗れ、と。