第5章 時代
視界の端で、若いガキ2人がジーサンに話しかけるのが見えた。
1人は細身の金髪、もう1人は帽子をかぶり、小柄な体格にしてはでかいリュックを背負っている。
様子を見るに、どうやら道を聞いているらしい。
俺は軽く舌打ちをした。
あのジーサンに聞くのはやめた方がいい。
始終ぼんやり港を見つめているだけなら害はないが、案外話し方はしっかりしているせいでよく人と話しているのを見かける。
だが、周りのヤツは揃ってこう言う。
あのジーサンの言うことはまるでデタラメだ、と。
記憶力が著しく低下しているのか気が触れているのか分からんが、自覚なく平然と嘘を吐くらしい。
道を聞いているなら間違いなくあのガキ2人は目的地に辿り着けないだろう。
もう一度舌打ちをして、重い腰を上げた時。
「旦那ァ!この荷はどっちです??」
またお前か。
いい加減腹が立って悪態を吐きながら教えてやる。
ほんの少し目を離し(体感ではそうだった)、もう一度ジーサンに向かって歩き出そうとした時、
──すでに2人はその場から消えていた。