第4章 友達
何を言ってるの、この人は。
今までなんて呼ばれてたのよあなたは。
そう思ってますます眉を寄せて、そこでハタと思いつく。
名前を聞かれて答えられない理由。
そんなのちょっと考えれば分かることだ。
もしかして。
ワケアリ?名前を出しちゃまずいの?
実は凶悪犯罪者で、指名手配書に顔が載ってる、とか。それなら、出身も名前も教えられない理由に納得がいく。
「ちなみに、別に追われてるわけじゃないからね」
想像を膨らませていたところに、青年はさくっと釘を刺す。
な、なんで考えていることわかったの?
あたしがよほどびっくりした顔をしたんだろう、彼はやや呆れたような表情をした。
「君、思っていることが顔に出てるってよく言われない?」
「いや、そんなこと言われたことはない…けど」
言いかけてふと言葉が止まる。
言われてみれば、あたしの周りにはやたらと察しがいい人が多かった気がしないでもない。
周りが鋭いんだと思ってたけど、実はあたしが分かりやすいの!?
青年は、一人で衝撃の事実と向き合っているあたしを見てやれやれと首を振ると、いいから早く名前つけてよと急かした。
…もう、なんかどうでもいいや。
あなたがどこの誰かも知らないけど、名前が欲しいなら付けてあげるよ。
「本当になんでもいいの?」
最後に聞くと、うんと返事が返ってきた。