第7章 純潔を失った天使は
「やっ……!は、放して…!!」
「ククッ……んっ……」
「いや……!!」
「キレーに残ってんじゃん、跡。キスマークってさ、重ねてつけると濃く残るんだぜ?」
「あ、アヤトくん放して…!!」
「一生、消えねぇようにしてやるよ。……ん……」
「あっ!やだ!」
「ほら、ここ。この胸のまわり…圧倒的にキスマークが多い。……んっ……ちゅっ」
「あ……っ」
「ククッ、相変わらず感度良すぎ。オマエはオレから逃げらんねぇんだよ。どんなに泣いても…離す気はねぇから覚えとけよ」
アヤトくんの唇と舌が赤い印をなぞっていく。その度に、印はさらに濃く身体に刻まれる。
───抵抗は、もうしなかった。
血が足りなくて、その気力もなかったのか。
それともこの行為を受け入れつつある自分がいるのか。
分からない。
ダメだと分かっていても、堕ちたら後戻り出来なくなると分かっていても、身体は素直に反応してしまう。
一度快楽にハマってしまえば、そこから抜け出せなくなる。それが私の中の恐怖を駆り立てた。
私はアヤトくんに…堕ちてしまったんだろうか?
それすらも、もう分からなくなり、私は考えることを放棄した。
「(ただ快楽に呑まれ、甘い熱に抗えず、彼から求められるものを結局受け入れてしまう…)」
本当に嫌なら拒絶すればいい。アヤトくんを突き放して、二度と会わなければいい。
それが出来ないのはきっと───……
「(心のどこかでアヤトくんを必要としているから。)」
馬鹿だと自分を嘲笑う。
「(本当に私は馬鹿で甘っちょろい。)」
アヤトくんの傍にいても
「(ただ傷付くだけなのに───。)」
傷付いてもアヤトくんの傍を離れないなんて…どうやら私の頭は彼の甘い快楽でおかしくなってしまったに違いない。
「(あぁ…なんて単純なんだろう。)」
アヤトくんの事はもう嫌いなはずなのに
酷いことをされて怖いはずなのに
「(それでもまた、求めてしまう。)」
彼から与えられる、甘い快楽を───……
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