第7章 純潔を失った天使は
【バスルーム】
「…はぁーさっぱりした。やっぱり花の香りがする石鹸にして良かった」
お気に入りの石鹸で身体を洗えば、優しい花の匂いに包まれる。鏡の前に立ち、服を着ようとしてボタンを留める手が止まる。
「…消えないな、跡。」
無理やりアヤトくんに抱かれ、身体中に容赦のない跡をたくさん刻まれ、消えるかと思えばまたアヤトくんに上書きされてしまう。
「(また同じ目に遭ったらと思うだけで…体が震える。)」
気をつけなくちゃ。そう意志を強く持つも、結局はアヤトくんに逆らえない。心では嫌だと拒絶しても、身体はアヤトくんを受け入れてしまう。本当に私の体、おかしくなっちゃったのかな…?
「やめよ…考えただけで頭痛がする。早く服着て部屋に戻ろう」
でも……、とまた考え込む。
「…アヤトくん、ここ数日我慢してくれてるんだよね、血……。無理やり抱くこともなくなったし…」
少しは私の身体を気遣ってくれてるのかな?
「…まさかね」
跡が見えないようにボタンをしっかり留めた。いつもユルい三つ編みは解いて、下の方でお団子にして崩れないようにヘアピンで留めている。
ガチャッ
「なんだ、もう出ちまってんのかよ?」
「っ……あ、アヤトくん!?」
バスルームから出ようとする前にガチャッと扉が開き、アヤトくんが入ってきた。
また勝手に入ってきて…!と怒ってやろうかと思ったが、アヤトくんが私を見て何故か驚いた顔をしていたので怒るタイミングを逃す。
「(どうしたんだろ…?)」
不思議に思っていると、ハッとしたアヤトくんが私に言った。
「チッ、つまんねー。…ま、服着たまんまでもいっか」
「え?」
「メグル、こっち来い」
「……やだ。」
「あぁ?」
「私、許してないんだからね。アヤトくんが無理やり抱いたこと。しかも血を吸って跡まで残して…」
「ンだよ、まだ怒ってんのか?」
「当たり前でしょ!?」
「あれは……オマエが悪いんだろーが」
「はぁ?完全にアヤトくんが悪いよ!!」
「いちいちうるせえな!そんなにオレ様に抱かれるのが嫌だったのかよ!?」
「抱かれる以前の問題なの!!そもそも無理やり襲うなんて最低!!」
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