第7章 純潔を失った天使は
アヤトくんが私を本気で殺すはずがないと信じ、私は体の力を抜いた。
「……っ……!!」
「チッ……!オマエ…」
「───げほっ、ごほっ!……っはぁ、はぁ…!」
私は解放された首に手を遣り、呼吸を整え直す。
「ふっ……うぅ……っ」
何故か私の目から涙が溢れる。苦しさから解放されたからか、それともアヤトくんが怖かったからなのかは分からない。
「……………」
「……あ!」
「…こんなもんじゃ、足りねぇな。オマエの身体に、しっかり教え込んでやるよ。オマエがダレのもんなのか。他のヤツがヒクくれぇ、証をつけてやる」
「い、や……」
「キツいキスの跡と……んっ、牙の跡と…体中を埋め尽くしてやる。…全部。……っ……ん」
「ん……!」
強引に口付けるアヤトくんに、私は苦しくて息ができなくなる。
「……っはぁ。……メグル。オマエはオレのもんだ。」
「(頭が…朦朧として…でも、なんでだろう?身体が震えて…止まらない。)」
「なんだよ?震えてんの?怖ぇってか?……安心しろ。思いっきり、痛くしてやるよ」
「っ!は、放して…!」
「おっと。逃げんな。ん……っ!はっ……」
「……っ……」
怖くて逃げようとすれば、簡単にアヤトくんに取り押さえられる。
「っ……メグル、知ってるか?処女を失うと血ってさ、味が変わるんだぜ」
「………!」
「オマエは…どんな味になるんだろうな…?クククッ…」
「いや…アヤトくん…」
「……っはぁ……ククッ」
「………っ!」
「さぁ天使サマ…オレに犯される覚悟はできたか?」
身体が重なる瞬間、アヤトくんは微笑んでいた。
いつもの面白がるようなものではなく、どこか安堵したような、堪らなく嬉しいような、そんな笑み。
『オマエはオレのモノだ』
私の身体をめちゃくちゃに掻き抱きながら幾度となく囁かれる言葉。
その声は、まるで暗示のように私の心を深く深く侵食していった──。
「(痛い…やめて…)」
私の悲痛な思いを無視して、アヤトくんは涙を流し続ける私の身体を無理やり抱いた。
まるで私の声など、届いていないかのように───……
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