第7章 純潔を失った天使は
ドキドキしながらテディを抱いたカナトくんを部屋に招き入れる。
「それで…用って…」
「…眠れないんです」
「え?」
「なんとなく、気分が高揚していて…寝る気になれないんですよ。あるでしょう?そういうこと」
「う、うん、そうだね」
それで何で私の部屋に…?
「君なら…僕を安眠へと導いてくれるんじゃないかって、ほんの少しだけ期待してみたんです。嬉しいでしょう?」
「……………」
全然嬉しくない。なんて死んでもカナトくんの前では言えないので黙っておく。
「あ、そうだ。私今からココア淹れようと思ってたの。一緒に飲まない?」
「ココア…?」
「うん、寝る前のホットココアには安眠作用があるんだよ」
「……………」
「カナトくんさえ良ければ…」
「くすくす…ふふふふ。なるほど、いかにも低能な人間らしいですね」
「う…だ、ダメ?」
「…いえ?悪くはありませんよ。僕、ココアの味は大好きなんです」
「そうなんだ!じゃあ…」
「でも…」
笑うのをやめたカナトくんが私の腕を捕まえて動けないようにする。
「(こんなに細い腕なのに、どこにこんな力が…!)」
「わざわざそんなもの淹れに行かなくても…ここに飲み物があるじゃないですか」
「(嫌な予感…!!)」
カナトくんが私の腕を捲る。
「貴女の血、前から味見したかったんです。だから…いいですよね?」
「よよよ良くない!!まっ…待ってよカナトくん…!!」
「あぁ…微かに甘い匂いがします。彼女とは違う血の匂い…。はぁ…美味しそうです」
「か、カナトくん…やめて…!」
「…やめて?僕に指図するんですか?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「むかつきますね…」
ドンッ
「っ………!」
突き飛ばされて床に倒れる。その時、頭をうちつけ、視界がぐらりと揺れた。
「ん?もしかして頭をぶつけたんですか?あーあ、マヌケですね。…暴れたりするからですよ」
「(ダメ…意識が…朦朧として…)」
「安心して下さい?僕はアヤトみたいに、反応がない餌をつまらないと思いませんから。寧ろ、煩い声を聞かずに済んでちょうどいいです」
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