第1章 PROLOGUE-はじまり-
今にも襲いかかってきそうなアヤトくんにビクッと肩が跳ねたが、それでも引き攣る顔で余裕に笑ってみせる。私はアヤトくんから逃げるようにして慌てて先を歩くレイジさんの後を追いかけた。
「どうぞ、ローズヒップティーです」
「…ありがとうございます」
ほのかに薔薇の香りが芳う紅茶に口を付け、喉奥に流す。
「(なんでアヤトくんまで…)」
何故かアヤトくんまで一緒にリビングまで来て、向かい側のソファーに座っている。
「(さっきの、まだ許してないよ。)」
強気な視線を送れば、それに気付いたアヤトくんと目が合い、ニヤリと笑われ、悪寒が走る。
「おやおやおやおやー?」
「っ………!?」
「こーんなところに、可愛い人間の女の子だってぇ?」
「きゃっ!?」
「て…あれ?誰かと思えばお花ちゃんだ」
「ライトくん!?」
私を『お花ちゃん』と呼ぶ彼は逆巻ライトくん。問題児の三つ子の一番下。ライトくんは時と場合を選ばず、私を見つけては執拗に迫り、あの手この手で触れようとする変態さんだ。
「(そりゃライトくんもいるよね!!)」
「くすくすくす…こんにちはと久しぶり、お花ちゃん…」
「っ………!!!」
頬をペロッと舐められ、そのざらざらとした舌触りに身体が震えた。
「な、何するの!!」
「何って…最近ボクに会えなくて寂しい思いをしてるお花ちゃんを慰めてるんだよ♪」
「別に寂しがってないから舐めないで!!」
「その怯えきった顔…うん、やっぱりお花ちゃんはそうでなくちゃ♪」
「(なんか納得された!?…ライトくんに会わないように上手く逃げてたのに…まさかこんなところで会っちゃうなんて。しかも相変わらず変態行為に磨きが掛かってるし…!)」
「その強気で蔑んだ目、たまんないなぁ…」
「(何故か喜んでる!?)」
恍惚とした眼差しで興奮が治まらないライトくんから距離を取る。
「ライト。いくら友人と言えど、女性に対してそれは少し不躾なのではないですか?」
「友人じゃありません!!」
「そーそー。ボクらはそんな浅はかな関係じゃないよ。もっと親密で深くて熱い、とろけるような気持ち良い関係さ。ね?」
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