第1章 PROLOGUE-はじまり-
「親密になったことなんか一度もないよ!!」
「え〜たくさんあるでしょ。お花ちゃんだって満更でもなかったクセに、何で隠すのかなぁ」
「隠してない!!適当なこと言わないでよ!!」
全く身に覚えのない私は、笑って平気で嘘を並べるライトくんの言葉に怒りが込み上げる。そんな私達を見たレイジさんがうんざり顔で溜息を吐いた。
「クッソ、殺すぞてめぇ。オレより先に地味子に唾つけやがって」
「アヤトくんにはビッチちゃんがいるでしょ。この子はボクが先に目を付けてたんだ。だからお花ちゃんはボクのだよ」
「(二人のモノでもないけど!?)」
「それに美味しそうなものにはツバつけとかないとねえ?野蛮な兄弟たちに食べられちゃうからさ。ねえ、カナトくん?」
「(え?)」
「──僕にも舐めさせてください。動いちゃダメですよ?ペロッ…」
「ひっ…!!」
ライトくんが舐めた反対側の頬を舐められ、私は慌ててその人物の方に顔を向ける。
「…うん。甘い…ユイさんの甘さには到底敵いませんが、貴女も凄く甘いです」
「カナト…くん…」
恐怖に満ちた眼差しでテディベアを抱いた男の子を見る。問題児の三つ子の真ん中で、名前は逆巻カナトくん。
小柄な割に意外と体は丈夫で、感情の起伏が激しくて、甘いものが好きなんだけど…少しヒステリックな部分がある。
「(私…カナトくんの泣いた顔と怒った顔しか見たことない…。)」
学校内で出会う度に緊張感が襲う。カナトくんの機嫌を損ねると、全く悪くない私にまで被害が飛び、しまいにはお菓子をくれるまで絶対に許さないという気難しい性格の持ち主。
「(三つ子が揃ってる。彼らに会わないように過ごしてきたのに…これってもしかすると絶賛大ピンチ到来では?)」
恐怖と不安を隠すように紅茶を一口飲む。
「(というか二人ともいきなり現れた…。気配もなかったし、どうやって…)」
「ねぇ、どうして彼女がうちに?」
「新しいオカズにお花ちゃんも加わったんじゃないの?」
「バーカ。コイツはオレんだ。学校でコイツに最初に会ったのはこのオレ様なんだからなぁ?くくくっ」
「(だからアヤトくんのモノじゃないよ…)」
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