第6章 芽生えた感情の名は
【嶺帝学院】
「メグル、帰んぞ」
「あれ?アヤトくん、今日は掃除当番じゃないの?昨日ユイちゃんからアヤトくんも同じ班だって聞いたんだけど?」
今日はゆっくり帰れると思った矢先、何故かいつも通り迎えに来たアヤトくんに首を傾げる。
「バーカ。オレ様はいーんだよ」
「良くないよ。皆やってるんだから。教室に戻ってユイちゃんと一緒に掃除してきて」
「テメェ…このアヤト様に命令するとはいーい度胸だ」
「じゃないとアヤトくんと一緒に帰らない」
「……チッ。メグルのくせに生意気だ!」
「アヤトくんの方が生意気でしょ!」
「ンだと!」
「私なんて可愛いもんだよ!」
「ハン!テメェのどこに可愛さがあるっつーんだ。反抗ばっかしやがって!」
「アヤトくんだって似たようなものじゃない!」
教室で言い合う私達を遠巻きに見ていたクラスメイト達がざわつき始める。"あれって…逆巻アヤトだろ?""すげぇ…あの逆巻と言い合ってる"なんて聞こえたりして、なんだか居た堪れない空気感が押し寄せた。
「ほら、アヤトくん!」
「どこ行くんだよ?」
「アヤトくんの教室!戻って掃除して!」
「ハァ?そんなの他の奴らに任せときゃいいだろうが」
「私先に帰るけどいいの?」
「……………。」
不機嫌なアヤトくんを連れ、彼の教室まで一緒に行くと、そこには困った様子のユイちゃんが、いなくなったアヤトくんを探していた。
「あ!アヤトくん!メグルちゃん!」
「ごめんね、ユイちゃん。アヤトくんが掃除サボろうとするから連れ戻して来たよ」
「そんなのやってられっか」
「もう……」
「アヤトくんも掃除当番なんだからちゃんとやってくれないと困るよ」
「じゃあ、私は外で待ってるね」
むすっとした顔のアヤトくんを教室に残し、掃除が終わるまで廊下で待とうと教室を出ようとした。
「ほら、バケツ持って」
「あー、なるほど…掃除、か」
「え?」
「なら……」
バケツを受け取ったアヤトくんは…
バシャンッ
「きゃあっ!?」
「オマエをキレーにしてやるよ」
あろうことかユイちゃんに水をぶち撒けた。
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