第1章 PROLOGUE-はじまり-
「退いて!!帰る!!」
「チッ、暴れんな!!」
「やだってば!!アヤトくん嫌い!!」
「……あ?」
「っ………!!」
「もっかい言ってみろ。オレのことが…何だって?」
"嫌い"と口にした途端、アヤトくんの機嫌が悪くなり、先程まで愉しげだった声のトーンが急に冷たくなった。
「おい地味子、答えろ」
「えっと…」
「"えっと"、何だよ?」
「(アヤトくん…怖い。)」
「チッ…聞いてんだからさっさと答えろ!!」
「だ、だってアヤトくん、意地悪ばかりするんだもん!頬だって摘まれたら痛いのに更に強くするし、やめてって言ってもやめてくれないでしょ…!」
「……………」
「どうして…私に意地悪するの?」
緑色の瞳が冷たく見下ろす。ただでさえ普段から怖い目に遭って嫌なのに、黙られると更に怖い。
「なんで意地悪すんのかって?」
アヤトくんは可笑しそうにふっと笑う。
「そんなの…オマエを泣かせて遊ぶのが愉しいからに決まってんじゃねーか」
「っ!!」
ニヤリとしたアヤトくんに顔が青ざめる。
「こんな良いオモチャ、手放せるかよ」
「私はアヤトくんのオモチャじゃない!」
「テメェなんかオモチャで十分だっつの。あぁ…オモチャっつっても、オレ様専用の泣き虫オモチャな!」
「酷い…アヤトくんのバカ!私はアヤトくんを愉しませるためのオモチャじゃないよ!!」
「あぁ〜!うっせぇな!ちったぁ黙れ!」
「…………っ!!」
苛立ったアヤトくんに怒鳴られ、身体が恐縮してしまう。
「ほら、もっと泣けよ」
「や…やめて…!!」
「オレのことが嫌いなんだろ。なら…もっと嫌われるようなこと今からシてやる」
「(何する気…?)」
「そういやオマエを食うのはハジメテだな」
「(食う!?)」
「あんま暴れんなよ。飲みづらいだろ」
「の、飲むって…、っ、やだ、アヤトくん!!」
「この…暴れんなっての!!少しは大人しくしやがれ…!!」
「(誰か──!!)」
「なんですか、騒々しい」
「!」
「っ……レイジ……」
「(この人…アヤトくんのお兄さん?)」
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