第4章 神の御遣い
「オレが正体を知ったのは最近だ。何度かオマエから血を貰う事で、どこかで飲んだことのある味だと気付いた」
「え……?」
「オヤジが昔、魔界で天使の血が入った小瓶を買ってきたことがあったんだよ」
「!」
「魔族より遥かに高い地位を持つ種族…それが"神の御遣い"と呼ばれる天使族。神の加護を受けて育った天使の血は高潔で、甘い果実みてぇな味がする。魔界でも天使の血は貴重で、すげぇ高級品なんだよ」
「もしかして…アヤトくんも飲んだの?」
「オヤジの目を盗んでな。初めて口にした時は美味すぎて衝撃を食らったモンだぜ。一度飲むと中毒になるくらい、やみつきになる」
「……………」
「ただ…あの時に飲んだ血とオマエの血の味が違ってた。オマエの方が美味い。そこで考えたんだよ。同じ天使なのに、何でこうも違うんだって」
アヤトくんの話に嫌な汗が止まらない。
「穢れのねぇ高潔な天使ほど、血も甘くなる。てコトはだ…他の天使に比べて、オマエは相当な力を持ってるってことなんだろ?」
「確かに…私は他の天使に比べて強い力は持ってるけど、アヤトくんが期待するほど凄い力じゃないよ」
「こんなに美味い血なのに?」
「ひっ!」
ペロッとアヤトくんが首筋を舐めた。
「なぁ…オマエらってさ、自分の持つ力の半分を相手に譲渡することができんだろ?」
「え?」
「その顔、図星だな。オマエの力があれば、オレは一番になれるってわけだ」
「…一番になるために力が欲しいの?」
「そうだ。オレは最強じゃなきゃならねぇ。だからオマエの力を半分オレに寄越せ」
「…イヤ」
「あぁ?」
「そんなことのために力を求めるなら、私はアヤトくんに力を渡すことはできない」
「……………」
「(母様と約束したの。天使の力を譲渡する相手は、ちゃんと見極めなさいって。中には天使の力を悪用する奴もいるからって。)」
「…オレが嫌いだからか?」
「!」
「散々いじめて、泣かせて、嫌がるオマエの血を無理やり吸ったから、オレに力を渡したくねぇのか…?」
「違うよ」
「何が違うんだよ!」
「(やっぱり様子がおかしい…)」
「まさか…他の兄弟に渡すつもりなのか?」
.