第4章 神の御遣い
「……っ……」
「遠慮すんな。ギリギリのとこまで吸い尽くしてやるよ」
「も、もう充分でしょ!?」
さっきはあんなに優しいキスしてくれたのに…!
こわい…アヤトくんが怖い…!!
「放して!!」
胸をグッと押し返すが、その手を取られ、指先を噛もうとするアヤトくんに顔が青ざめる。
「やだ…!やめて…!」
「ほっせぇ指だな。……チュッ。」
アヤトくんは人差し指に軽くキスをした。
「もう!!放して!!あ………っ」
「おっと…!なんだ、もう血がまわらなくなったか?」
「(クラクラする…)」
「ほら、もっと吸ってやるよ。…抵抗もできねぇくれぇにさ」
「や、やめてってば…っ、もう、本当に…!」
「ククッ、だから言っただろ?『もうオレから逃げられねぇ』ってさ」
「ひっ……!」
「チチナシも覚醒して、オマエの力も手に入れられれば…もっと最強になれる」
「さっきから何言ってるの…?」
「とぼけんなよ。オマエのその血、何かで匂い消してやがんな?」
「!!」
「今も人間と同じ匂いさせて暮らしてるみてぇだけどさ…血の匂い消してんのは、オレらみたいな魔族に、オマエらの持つ血の匂いを気付かせねえ為なんだろ?」
「"オマエらの血"…?」
「ハッ、まーだとぼけんのかよ!」
「い、言ってる意味が分からないよ…」
「そうか。ならハッキリ言ってやる」
ニヤリと笑んだアヤトくんに嫌な予感を覚え、鼓動が普段よりも小刻みに加速する。
「──オマエ…"天使"だろ?」
「っ………!!?」
「その反応、やっぱりな。天使なんて本当にいるのか疑わしかったけど…こうしてちゃんと存在したんだな」
「な、なに…何で…」
「イイねぇ、その絶望感に染まった顔。今まで見てきたどの顔よりも最高だぜ」
「(逃げなきゃ…!!)」
「この状況でまだ逃げられるとか思ってねぇよな?オマエを組み敷いてんのは誰だ?女が男の力に勝てるわけねーだろうが」
「放して!!お願い!!」
恐怖で青ざめた顔で涙を浮かべながらアヤトくんに訴えるも、離してくれない。
「どうして…どこで私の正体が…」
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