第4章 神の御遣い
「な、何言ってるの…」
「カナトもライトもオマエを気に入ってる。アイツらだっていずれオマエの正体に気付いたら、血も力も独り占めするはずだ…!」
「ア、アヤトくん!痛い!」
肩をグッと押さえ付けられ、痛みで顔を歪める。それでもアヤトくんはどこか焦った表情と苛立ちが含む声色で話を続けた。
「オマエはオレのモノだ。オレだけ見てればいい。一日中オレのことで頭ん中いっぱいにして、オレのことだけを考えてればいい」
「わ、私はアヤトくんのモノじゃ…」
「うるせぇ!オマエはオレのモノなのに、他の奴に尻尾振ってんじゃねぇよ!」
「い、言ってることがめちゃくちゃだよ…!ていうか尻尾なんて振ってない!もう…アヤトくんどうしちゃったの!?」
こんな状態のアヤトくんを見るのは初めてで、怖くなって身を捩り逃げ出そうとした時、ポトッと何かがベッドの上に落ちた。
その瞬間、ふわりとした甘い匂いが強烈に広がった。
「っ……なん、だ……この匂い……?」
「っ………!?」
「すげぇ…甘い匂いだ。頭が麻痺したみたいにクラクラする。この匂い…もしかしてオマエからか?」
「(しまった!匂い袋を落とした…!)」
「あーコレか…オマエが落としたの」
アヤトくんは天使の匂いを消すために持ち歩いていた匂い袋を拾い上げる。
「そうか、これで匂いを消してたんだな。っ、あー…やべぇな…オマエの首に噛み付きたくて仕方ねぇ」
「は、放して!退いて!」
「ククッ…だからもう逃げらんねーっての。諦めてオレ様に堕ちちまえ」
「いや!放して!」
「マジでやべぇ…覚悟はしてたけどここまでかよ。っはぁ…我慢できねぇ」
「っ!いや!アヤトくん…!」
「──なぁ、天使サマ?」
アヤトくんは怖いくらい、不気味に笑う。
「力を寄越さねぇならさ…無理矢理にでもオレのモノにしちまおうか?」
「っ…………」
唇が触れ合いそうな距離にアヤトくんの顔が近付き、ニヤリと笑ったアヤトくんに恐怖を感じた私は、青ざめた顔を浮かべて身体を震わせた…。
next…