第1章 PROLOGUE-はじまり-
私と同じ夜間学校『嶺帝学院』に通う二年生で、問題児の三つ子の長男。
「(それに超が付くほど俺様ないじめっ子!!)」
思い返せば、アヤトくんとの出会いは一年の時。私の不注意からアヤトくんにぶつかってしまい、謝罪したのにも関わらず、許してもらえなくて文句を言えば、初対面の私に対して"地味子"なんて失礼な渾名を付けられた。
『オマエ今日からオレ様のオモチャな!』
「(そう言って何故か頬を摘まれた。)」
あの時のアヤトくんの顔ときたら…新しい玩具を手に入れた子供みたいに凄く愉しそうだったのを今でもハッキリと覚えている。
「(私を見つけるとすぐに苛めてきて、お腹が空いたから好物のたこ焼きを作れと強引に調理室に引き摺り込まれたこともあったな…。)」
本当に我儘なオレ様だと思う
無意識に溜息が零れた。
ズク…ッ
「っ!」
突然、心臓を針で刺すような強い痛みが伴い、両手で胸を押さえる。
「(い、たぃ…っ)」
『呪いは少しずつ君の心臓を蝕み、その身体に耐え難い痛みと苦しみを与える。君が運命の相手を見つけられなければ、君に訪れるのは死だ』
夢の中で【誰か】に言われた言葉を思い出し、苛立ちを募らせる。身体がよろめきそうになったが、なんとか踏ん張り、痛みと苦しさに耐えながら鞄から彼女のノートを取り出して、アヤトくんの眠る側に置く。
「(息が苦しい。胸が痛い。…少し我慢すれば直に治まる。呪いなんかに負けない。こんな忌まわしい呪いなんかすぐに解いてやる。)」
ズクズクと心臓を蝕む感覚にジッと耐え、米神に脂汗を浮かばせながらゆっくりと深呼吸を始めると、次第に胸の痛みと息苦しさが消えた。
「(今日はもう帰って早く休もう。)」
「……っ……」
背を向けた途端、後ろで物音がした。
「……え?」
「…るっせえ…」
「お、起きて…」
パシッ
「ひっ!!」
目を覚ましたアヤトくんが不機嫌そうにこちらを見つめた後、私の手を掴んだ。
「あー…?んだ、オマエ…」
「(っ…アヤトくんの手、冷たい…)」
「んだ…女かよ。チチナシかと思ったじゃねえか。こんなところで何してんだ?あ?」
「(あれ?もしかして私だって気付いてない?)」
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