• テキストサイズ

終わらない愛があるとしたら【ドS吸血鬼】

第1章 PROLOGUE-はじまり-



「お、お邪魔しまーす…」



屋敷の中は薄暗く、注意して歩かなければ、床に躓いて転んでしまいそうになる。



「あの!すみません!誰かいませんか?」



中央には二階に続く階段があり、いくつかの部屋もある。きっと今いるここはエントランスホールだ。私は怖がりながらも、ゆっくりと周囲を見回す。



「(ドアが開いたから絶対に誰かいるはずなのに…人の気配がしない。)」



恐怖心が煽られ、逃げ出したいと半べそをかいていれば、バタンッとドアが閉まった。



「ひぃっ!?」



閉まる音にさえビビり散らかし、女子とは思えない小さな悲鳴を上げる。バクバクと逸る心臓を落ち着かせ、スゥゥー…と息を吸い込む。



「(描いてくれた地図が間違ってたんだ。こんな怪しい場所にユイちゃんはいない。一度屋敷を出て彼女に連絡しよう!)」



身体を震わせて涙目になりながらも、屋敷から出ようとすると、ふと視界の隅にソファーが目に入り、誰かが寝ている事に気付いた。



暗くて顔までは見えないが、誰かがいたと云う事にホッと胸を撫で下ろし、その人に駆け寄る。



「あの!すみません!此処で暮らしている小森ユイという女性に忘れ物を届けに来たの…です…が…」



「……………」



「え……?」



そこで眠っている人物の顔を見た瞬間、私は衝撃を受け、ピシッと身体を硬直させた。



「…………っ!?」



本物のオバケよりも、もっと恐ろしいものに会ってしまい、思わず叫びそうになった声を慌てて呑み込む。



「ア…アヤト…くん…?」



見間違いだろうか、とゴシゴシと目を擦り、もう一度しっかりと眠っている人物の顔をまじまじと観察する。



「(見間違いなんかじゃなかった!!本物のアヤトくんだ!!何で此処にいるの!?)」



「……………」



「(え!?幻覚見てるんじゃないよね!?)」



そしてその瞬間、気付いてしまった。



「(…ちょっと待って。アヤトくんが此処にいるってことは…もしかしてこの屋敷…)」



サァーッと顔から一気に血の気が引いた。



「(逆巻兄弟の家!!?)」



知らぬ間に魔窟に迷い込んでしまった事実に、私は目を見開き、言葉を失う。



「(最悪…アヤトくんがいるなんて…)」



思わず顔を歪めた。



.
/ 390ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp