第3章 初めてのキスは鉄の味
「(え……)」
「…んっ…」
「んんっ…」
く…唇を…噛まれてる…!
「……は……っ……クッ、本当にイイな、今日のオマエ。たまんねぇ表情してる。ひとつも見逃したくねぇって思うくれぇにな」
「……はぁっ」
「……っはぁ。やっぱオマエの血も格別だわ…ますます力が満ちるみてぇだ。ククッ、すげぇ…!……んっ……は。」
「ん……!」
信じられない!
ファーストキスなのに…!!
「ヤベェ、とまんね…っ!は、んっ……」
唇から流れ出た血を一滴残さず取り込むように、息もできないほど深く深く、唇を重ねる。
これはキスじゃない。アヤトくんにとっては、いつも通りのただの食事。吸血行為。
そう思い込もうとするのに、どうしようもない喪失感が私を思う。
初めてのキスは鉄のような…血の味がした。
「ん…っはぁ。」
ようやく唇を離してもらえて、腕を拘束していた鎖も外してもらえた。力が抜けた私は壁に背を付けたまま、ズルズルと床にへたり込む。
「なんだよ、これくらいでへばったのか?」
「…も…何するの、ばか!」
「ああ?バカだと!?」
「き、キス…するなんて!信じられない!アヤトくんのバカ!」
「はぁ?キスくらいで何怒ってんだよ?」
「キスくらい!?」
アヤトくんの発言にわなわなと身体が怒りで震えた。
「アヤトくんにとってはただの食事だったのかも知れないけど…!何も唇から吸うことないじゃない…!!」
「…ははーん。キスごときで何をそんなに怒ってんのかと思ったら…」
「な、なに?」
ニヤニヤと意地悪そうな顔をしたアヤトくんが私の前にしゃがみ込む。
「オマエ、実は今のがファーストキスだな?」
「な……っ!?」
「ククッ…ハハッ!そーかそーか!オマエのハジメテ、オレ様が奪っちまったなぁ…?」
「っ〜〜〜!!」
からかうように言うアヤトくんに私は顔を赤くして悔しげに睨んだ。
「うぅ…初めてのキスが鉄の味…」
「なんだよ、オマエまさかファーストキスはレモンの味とか思ってんじゃねぇだろうな?」
「お、思ってないよ!」
「動揺し過ぎだバーカ。」
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