第3章 初めてのキスは鉄の味
【遊戯室】
「……っと、よし。ククッ」
「(アヤトくんの…声?)」
「おい、起きろよ」
バチンッ
額に痛みを感じるが私はまだ目を覚まさない。それよりも体が痛い。何かに締め付けられているかのような…。
「起きろっつってんだ、オラ!」
ぎゅむっ!
「いひゃ…っ!」
次に強烈な頬の痛みでパチッと目を開けた。
「目ぇ覚めたかよ?」
私の頬を抓ったアヤトくんがニヤリと笑う。じんじんと痛む頬に涙目になり、文句のひとつ…いや、四つほど言ってやろうと思った。
「え……?」
「ククッ」
目が覚める前から体が痛かった。もっと言えば腕が痛い。ふと顔を上に向けると何故か壁に磔にされており、両腕は鎖で絡め取られている。
「っ……!あ、アヤトくん!?ヤダ、何これ…!」
顔が一瞬で青ざめた。腕を動かそうとするが簡単には外れず、パニックになる。
「あ、アヤト…くん…これ…外し…」
「早速泣くのかよ。目に涙潤ませて、ちったぁ我慢しろっつの。別にまだ何も始まってねぇだろうが」
アヤトくんが呆れるように言う。だが私はそれどころじゃない。目が覚めたら突然壁に磔にされて、しかも身体は動かず、腕は鎖で絡め取られているのだ。
「(…ここ、遊戯室?)」
「イーイ眺め。ククッ」
「(またアヤトくんに悪戯されるの…?)」
不安と恐怖で顔が強ばる。
「今夜は…興奮して眠れねぇんだ。ちょっと付き合えよ」
「つ、付き合うって…その前に、この鎖外して…!」
「バーカ。オレ様の遊戯に必要だからわざわざ括ってやってんだろ?」
「遊戯…?」
「そう……。こうすんだよっ!」
ドスッ!
「きゃあっ!?」
何かが頬を掠める。そろり…と後ろに目を遣ると私を背にしてダーツ盤があり、矢はそこに刺さっていた。
「(あ、アヤトくんが今投げたのって…)」
「今からオマエはダーツの的だ。ククッ、絶妙なコントロールだな。さすがオレ様」
コツコツと靴音を鳴らし、アヤトくんは私の前で立ち止まる。
「血がようやく流れるっつーギリギリの切れ目…っ」
「……っ……」
頬から垂れる血をアヤトくんは舌でペロッと舐めとった。
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