第3章 初めてのキスは鉄の味
なんだか入浴剤ってより薬品みたい…
「あ、でもいい香り…」
「だろ?さっさと入れてみろって」
「う、うん」
封を切って入浴剤を浴槽の中に入れる。
「わ……!」
す、すごい湯気が…!
「けほっ、けほっ…!」
「ククッ」
「(やっぱり…騙された?…頭がぼんやりする…)」
浴室が湯気一面で覆われ、視界すら見えづらくなった中、入浴剤のせいか、頭がぼんやりし始め、私はすぐに意識を手放した…。
◇◆◇
「ん……」
「お…よお。目覚めたかよ?」
「アヤト…くん?」
目を覚ますと自分のベッドで寝ていた。きっと意識を失った私をアヤトくんが部屋まで運んでくれたのだろう。
「(体が重い…口を開くのも…億劫な感じ…)」
「ククッ、身体の自由がきかねぇか?…どんな感じだよ?」
「あ…あつ、い…」
熱くてクラクラして、お酒に酔ったらこんな感じなのかと少し怖かった。
「ハハッ、だろうな。感謝しろよ?風呂でのぼせたオマエをこのアヤト様が運んでやったんだからな」
「(のぼせた…?そう…だっけ?)」
「ククッ、顔が火照ってんぜ?」
「あ……」
「ん?」
「…アヤトくんの手…つめたくて…きもちいい」
顔に触れようと伸ばしたアヤトくんの手を両手で優しく掴み、自分の頬へと押し当てた。
「……っ……」
「ふふ…っ」
「…なら、もっと触ってやろうか?」
目を閉じて冷たさの余韻に浸っていれば、アヤトくんがそんなことを言い出す。
「…オマエは、どこ触って欲しい?今日だけは、オマエの望む通りにしてやるよ」
「ドコ…?」
「ああ。…どこが熱い?」
「…頬。頬が熱い…」
「…チッ、なんだ顔かよ。つまんねぇな。ま、いいや。顔だな?」
手が離れていった代わりにアヤトくんが顔を近付け、熱を帯びた頬に唇を落とす。
「ん……チュ。」
「あ……」
「あっつ。火照りすぎだろ。……んっ。」
「(ひんやりする…)」
「なんだ?気持ちいいか?」
「ん……」
「…イイな。今のオマエ。無防備で、とろけた顔してる。こういうのも悪くねぇな。…そそられる。……チュ。」
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