第3章 初めてのキスは鉄の味
「一応、手当てしてくれたんだよね?だから、ありがとう」
「ナニ言ってんだか分かんねぇな。オレは自分のメシが零れねぇようにしてるだけだぜ?」
「(ふふ、素直じゃないなぁ。)」
「ほら、もっと血よこせよ」
「…あんまり強く吸っちゃやだよ…?」
「知るか。は…っ…」
そう言いつつも、いつもよりは手加減してくれている。だが男の子に膝を舐められるのは初めてなので、凄く恥ずかしいのは確かだ。
「…ん…」
「あ…!?や、ちょっと!そこは怪我してな…っ」
舌がだんだん上の方に…!
「膝は飽きた」
「あ、飽きたって…。ひゃっ、や、やめて!そっちはダメだってば…!」
危険な予感がして思わずアヤトくんの頭を引き離す。
「わっぷ!ナニすんだ、テメェ!」
「だってアヤトくんが人の太もも舐めようとするから!」
「手当てしてやったんだろ?礼はきっちりもらわねぇとな。ほら、隠してんじゃねぇよ。スカートどけろ」
「お、お礼なら血で充分でしょ!」
「足りねぇ」
「だ、ダメ!絶対にダメだから!」
「チッ、ナーニカマトトぶってんだよ」
「カマトトぶってない!」
「オマエの太もも見たくらいじゃ興奮しねぇよ。ライトじゃあるまいし」
「そういう問題じゃありません!」
「チッ」
「舌打ちしたってダメなんだから…!」
「はぁー…」
うんざりした顔で頭をガシガシと掻くアヤトくんは立ち上がると薬品棚から何かを取り、私のところに戻ってくるとまたしゃがみ込んだ。
「おら、動くんじゃねえぞ」
「ガーゼと包帯…?」
「いいか。今度勝手に転んで血なんか流しやがったらタダじゃおかねぇ。転ぶんならオレの見てるところで転びやがれ」
そうぶっきらぼうに言い捨てるとアヤトくんは不慣れな手つきで傷口を覆うようにガーゼを貼り、その上から包帯を巻き始める。
「うん…ありがとう、アヤトくん」
ぐるぐるに巻かれた不格好な包帯を見て、私はなんだか嬉しい気持ちになり、口許を緩ませた。
.