第3章 初めてのキスは鉄の味
「失礼します」
何もないところで躓き、膝から血が出てしまい、消毒のために保健室へとやって来た。
「(あれ?保健の先生いないみたい…)」
仕方ない
勝手に使わせてもらおう
「ただのかすり傷だしね」
薬品がしまってある棚を開けて消毒液を探す。
「確かこの辺に…」
「…血の臭いがする」
「わ!」
自分以外の声に驚いて後ろを振り向くと、そこに険しい顔をしたアヤトくんがいた。
「オマエ…怪我したのか!?」
「あ、アヤトくんか。もう、ビックリさせないでよ。ていうか何で保健室に…」
「怪我したのかって聞いてんだよ!」
「う、うん…。ちょっと転んじゃって…」
「チッ、オレ様に断りもなく血流しやがって…」
「そんなこと言われても…」
「つーか転ぶなんて鈍臭過ぎだろ。ちゃんと足に力入れて歩けよ」
「あ、歩いてたよ」
「歩いてねーから転んだんだろうが」
「…ごもっともです」
「貸せ。オレが手当てしてやる」
「え?いいよ。自分でできるから」
「黙ってソコ座れ!」
「わっ!」
手を掴み、強引に椅子に座らせたアヤトくんは私の前にしゃがみ込み、スカートを捲る。
「ココか?」
「あ、ちょ、ちょっと!そんなに捲らなくても膝なんだから傷口見えるでしょ!?」
「うっせぇ。大人しくしてろ」
「あ…消毒液はそこに…」
「必要ねぇよ」
「え?」
「…んっ…」
あろう事か、アヤトくんは怪我をした傷口部分に口をつけた。驚いた私は戸惑った顔でアヤトくんを見る。
「え!?あ、アヤトくん!?傷口洗ってないから汚いよ!そこの水道水で洗うから!」
「オマエの血を水で流すなんて冗談じゃねぇ。一滴だってムダにするかよ。…ん…っ…」
「ひゃっ!」
「ククッ、ほら、キレーんなって新鮮な血が溢れて来たぜ?」
「(なんだかんだでまた血を吸われちゃってる…。本当は拒絶しなきゃいけないのに。)」
でもアヤトくんが消毒してくれたおかげで本当に傷口はキレイになった。
「アヤトくん」
「…ああ?」
「ありがとう」
「…っ…はぁ?」
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