第22章 唯一望んだもの(❤︎)
シュウさんの名前を呼んだ瞬間、ライトくんがピタッと止まる。そして驚いた顔で涙を流す私を見ている。
「……んふっ……あははっ!本当に効いてるんだなあ、あの薬!こんな場面で、まさかシュウの名前を呼ぶなんてね!いや、こんな場面だからこそ…なのかな?」
「さっきから…言ってる薬ってなに…?」
「ま、シュウに錯覚を起こしちゃったのは、計算外ではあったけど…でも、それはそれで面白かったと思わない?ふふっ」
「何を…言ってるの?」
「最近ボクが話しかけてもボーッとしてるし、反応が薄くて退屈だったから…別の誰かを想うお花ちゃんは、色々刺激的だったよ」
「(別の誰かを想う薬…?)」
「嫉妬は愛を深めるエッセンス。…そう教えてくれたのはキミなんだよ?」
「ま、まさか…私に薬を?だから最近、シュウさんのことが…」
「そうだよ。お花ちゃんも久しぶりにドキドキして楽しかったんじゃない?」
「……………」
ライトくんの言葉に驚きを隠せないでいた。
「興奮したんだろうなぁ…シュウに吸われるところなんかも想像しちゃってさ?」
ライトくんが愉しげに説明するも、私は怒りで顔をぐっとしかめ、涙を浮かべた目でライトくんを見る。
「でもボク的には失敗だったかも。ちっとも面白くな──」
バチンッ!
「………っ!?」
「酷い……!」
ライトくんを引っ叩いた手のひらがじんじんと痛む。いきなり頬を叩かれたライトくんは驚いた顔で私を見ていた。
「今、何を考えて、何をしたいかとか…誰と…一緒にいたいとか…そんなの、全部自分の心が決めることでしょ?」
泣くのをぐっと堪え、ライトくんに怒りをぶつける。
「退屈しのぎに人の心を弄ぶなんて、絶対やっちゃいけないことだよ!許せない!」
「……っ……」
「(カッとして思わず引っ叩いちゃった…)」
「だって…。キミはボクのモノなんでしょ?違うの?」
「(そうだよ…!だって私は…私はあの時コーデリアにも…他の誰にも絶対負けないって、強い心を持つって決めたんだもん。…ただひとりを愛し抜くために…ただ、ひとり…)」
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