第20章 壊れ始める恐怖
「んふ。余計なことを…」
「……………」
「お花ちゃん、これで気が済んだ?コーデリアはボクらの母親さ」
「…その人が、どうして私の夢の中に…」
「……え?」
「っ………」
もう、訳がわからない。一体どういうこと?彼女はライトくん達に殺されて、その心臓をまだ生まれたばかりのユイちゃんに移植した。そして今も彼女の中で生きている。
「(コーデリアは私の力を奪うつもりだ。一つ気がかりなのは…彼女が天使の力を手に入れて何をするのか。)」
「──お花ちゃん?」
「(今はまだ分からない。でも彼女の思い通りにはさせない。私は必ず呪いを解いて、母様を殺したアイツを……──あれ?アイツって…誰?)」
コーデリアから元凶の名を聞いたはずなのに…何故か思い出せなかった。
「……………」
「お花ちゃーん?大丈夫?」
「ライトくん…どうして…コーデリアを…ううん、お母さんを殺したの?」
「んふ。その話か…どうして殺したか、ねえ…」
「うん」
「強いて言うなら。…憎くて、愛しかったからさ」
「愛しい…?」
「ボクだけのものにしたかったんだ」
「!!」
「でも…殺しちゃってから気づいた。ボクにとってあの人が堪らなく眩しかったのは、他人のモノだったからだ」
「っ…………」
「あの人が、誰かのものであることを思い知らされれば知らされるほどに、ボクは…興奮してたんだ。それに気づかずに、ボクは彼女を突き落とした。今考えれば、ボクが愚かだったね」
「(だから彼女はいつも…手すりの近くにいたんだろうか。)」
そこからライトくんが突き落としたから。そう考えると身体が小さく震える。
「そして、そんな感情をボクに理解させてくれたのは、お花ちゃん、キミだ」
「(…もしかして、ライトくんがずっと、憎くて憎くて愛してる人って言ってたのって…お母さん…コーデリアのこと…?)」
ズクッ
「うぐ……っ」
強烈な痛みが襲い、胸を押さえる。
「んふ、お花ちゃん、いつもの発作?」
「は…はぁ…い、た…っ…」
針を刺すような痛みに涙が浮かぶ。
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