第20章 壊れ始める恐怖
『あの人に逢いに行くのよ。あの人…カールハインツに…』
『"カールハインツ"…もしかしてそいつが私に呪いをかけた奴なの!?』
『口を滑らせたわね…でもいいわ。どうせ夢から醒めたら、アンタはカールの名前なんて忘れちゃうんだし』
彼女は口許に笑みを湛えて、憐れむような眼差しを向けた。
『(ここにきてやっと手がかりを掴んだ!カールハインツ!コーデリアの妻にしてライトくん達の父親!そいつが全ての元凶!)』
高ぶる感情を抑え込み、コーデリアに問う。
『そいつは今どこにいるの』
『教えないわ』
『っ、そいつのせいで私と母様は…』
『何よ、カールが悪いんじゃないわ。あの女があの人を誑かしたの。だからあの女が死んだのも、アンタに呪いを掛けたのも当然のことよ』
『違う!貴女の夫が!自分の思い通りにならないからって母様を殺したの!私に呪いを掛けたのも本当は私を恨ん…』
『ああもう!うるさいわね!』
苛立ったコーデリアはうんざりしたように顔をしかめた。それでも私はキッと彼女を睨みつける。
『生意気な目ね。あの女に睨まれてるみたいで気味が悪い。アンタもさっさと死になさいよ』
『…私は呪いになんか負けない。必ず特別な者を見つけ出して、この忌まわしき呪いを解いてみせる』
『呪いを解くですって?ハッ、それはまた随分と大きく出たわね。でも無駄よ。あの人が掛けた呪いはアンタの全てを喰らい尽くす』
『それでも呪いが解けるまで抗う』
『……………』
コーデリアの冷えた瞳が突き刺さる。
『…いいわ。そうやって虚勢を張ってなさい。アタシは必ずアンタの力を手に入れる。そしてアンタは呪いが解けずに死ぬのよ!』
サラサラとした紫髪に手を遣ると、彼女の手の甲を滑るように落ちた。
『アタシの復讐は始まったばかりよ。ねぇ楽しみでしょう?』
『なんでも貴女の思い通りになると思ったら大間違いだよ』
『…なんですって?』
『貴女にも必ず罰が下る』
『罰?アハハ!それはアンタの方でしょ?天使のくせに魔族の血を身体に取り込んだんだもの!掟を破ったアンタを天界の奴らはどう思うでしょうね?』
『……………』
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