第20章 壊れ始める恐怖
【リビング】
「(最近また、頭がボーッとする…。なんだか喉も渇くことが多くなった。やだな…どんどんおかしくなり始めてる。)」
「──おや、誰かと思えば貴女でしたか」
「レイジさん」
「どうしたんです?ボーッとして。ライトはどこに?」
「さあ」
「…フン。気に入りませんね。その気の抜けたような返事。特に会話をしろとは言っていませんが」
「……………」
「貴女、自分で分かっているかどうか知りませんが、大分末期的になっていますよ」
「末期的…?」
意味が分からず、首を傾げる。
「まぁ貴女も覚醒に成功するとは限りませんから」
「覚醒ってどういう意味ですか?」
「ヴァンパイアとして目覚めることです。ライトから聞いていませんか?」
「(だから覚醒なのか…)」
「人間という種族はヴァンパイアと交われば交わるほどに血を闇色に染めていく、と。」
「…私は、ヴァンパイアにはならないと思います」
「何故そう言い切れるのです」
「……………」
「だんまりですか。貴女のそういう顔を見ると紅茶の味が台無しですね」
「レイジさん…ライトくんが言っていたのですが、貴方は私の秘密を知っていると聞きました。レイジさんが知る、私の秘密って…何ですか?」
「…ライトがまた余計なことを。まぁ隠す必要がないのでいいでしょう。私が知っている秘密とやらを教えて差し上げます」
私は固唾を呑んで、レイジさんを見つめる。
「先ほど人間という種族はヴァンパイアと交われば交わるほどに血を闇色に染めていくと言いましたね。ですが、血を闇色に染めていくのは…何も人間だけではないのですよ」
「え?」
「例えば、"神の御使"と呼ばれる種族…高潔な血を持つ天使にも人間と同様に、魔族と深く交わってしまえば…その清らかな血は穢れ、ヴァンパイアと成り果てる」
「っ…………」
ドクンッと心臓が嫌な音を立てる。カチャリとティーカップを置いたレイジさんは静かにこちらを見た。
「貴女は天使ですね」
「!!」
「しかも相当な力を持っている。違いますか?」
私は言葉を失う。目を見開いたまま驚いた表情を浮かべていると、レイジさんが顔をしかめた。
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