第2章 悪戯好きのトラブルメーカー(√)
恐怖で呼吸が浅くなり、ポロポロと流れる涙は自分でも止められない。
「もっと、ソノ声聞かせろよ。もっと嫌がれ、もっと怯えて、もっと泣けよ!」
「来ないで!!」
「オマエのその反応が見れんならなんでもするぜ?」
「(後ろは壁…もう…逃げ場が…)」
「ククッ、もう逃げらんねぇな。…次は、外さねぇぜ?」
「………っ」
「全身蝋まみれになったらさ、その後は、熱くなった血をたっぷり味わってやるよ」
「や、やだよ…!」
アヤトくんの目は本気だった。
「ククッ、今夜はここで、オマエを思う存分なぶってやる。…覚悟しろよ?」
「(助けて…母様…!)」
じりじりと迫ってくるアヤトくんに、ぎゅっと目を瞑る。
「…………」
「痛ッ!?」
頬への痛みで閉じていた目を開けると、しゃがみ込んだアヤトくんがニヤリと意地悪そうな顔で笑い、私の頬を摘んでいた。
「な…なんふぇ?」
「やっぱ蝋で溶かしてオマエを人形にするより、こうして泣かせて遊ぶ方がしっくりきたんだよ」
「…私の頬は遊ぶためのものじゃないよ」
「うっせ。蝋を掛けられなかっただけ有難いと思いやがれ。あー、なんなら本当に蝋人形にしてやってもいいけど?」
「余計なこと言ってすみませんでした…!」
「そうやってオレのやることに素直に従ってりゃいいんだよ」
アヤトくんは私の頬をむぎゅっと摘み、横に引っ張ったりして遊ぶ。凄く痛かったけど蝋人形にされなくて良かったと内心ホッとした。
◇◆◇
【学校】
昨日の蝋人形未遂事件から解放され、今日出された課題の量が多くて頭を抱える。
家に持ち帰ってやってもいいのだが集中できる自信もないし、それならちょっと残って半分でも終わらせようと思った。
「よお、帰ろうぜ、地味子」
「アヤトくん…。その呼び方やめてって言ってるでしょ。私そんなに地味じゃないよ」
「だって、オマエの名前とか覚えてねぇし。その点『地味子』なら、オマエ見りゃ一発で出てくるからな。地・味・子」
「もう…メグルだよ、兎月メグル。ちゃんと覚えて。他の人まで地味子って呼んだらどうするの?」
「つーか、ナニやってんの?オマエ」
き、聞いてない…
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