第19章 三つ子の母
「…ねぇお花ちゃん。そんなに怒らなくてもいいんじゃない?ボクまだキミに何もしてないんだけど」
「部屋から出てって」
「それは出来ない相談だなあ。どうしてキミがそんなに怒って泣いてるのか、理由を聞かせてくれるまでは、ここを動かないよ」
「いいから出てって!」
泣き腫らした目で睨めば、ライトくんは肩を竦めて息を吐いた。
「だから理由を教えてってば。まぁお花ちゃんがそんなに怒る理由は多分ボクが原因だとは思うけどね」
「ライトくんの顔なんか見たくない」
「!」
「だから早く……」
「誰の顔が見たくないって?」
「っ…………」
急に真面目なトーンになったライトくんが、こちらに近付いて来る。
「来ないでって言ってるでしょ…!!」
近くに置いてあった本を投げつける。
「おっと。ざーんねん…外しちゃったね。さあてお花ちゃん…じっくり話し合おう、かっ!」
「きゃあ!?」
首を掴まれ、そのままベッドに押し倒される。上に乗ったライトくんが怖い顔で、私の首を締め始める。
「う、ぐっ……」
「さっきの質問だよ。誰の顔が見たくないって…?」
「っ…………」
苦しくて息が出来ず、顔を歪める。
「ほら、言ってみろよ。」
「はっ…くる、し……つ」
「あぁ、そういう顔も可愛いよお花ちゃん。ボクの手で殺されそうになってるキミは…とても綺麗だ」
「(っ、もう…息が…!)」
酸素が足りず、意識が飛びそうになる。
「…これ以上はさすがに死ぬか」
「っ……!げほっ、ごほっ…はぁはぁ…!」
パッと手を離すと呼吸が出来るようになり、私は思いきり肺に酸素を取り込む。
「死ぬかと思った?」
「っ…………」
「今のは本気で殺しちゃいそうだったよ。だから発言には気をつけようね、お花ちゃん」
「(本気で殺されるかと思った…)」
「それで、どうして泣いてたの?」
「ライトくん…」
「何?」
「私のこと、本気で好き?」
「疑り深いなあ。言っただろ。初めて会った時からボクはキミのことが好きだったって。まだ信じてくれないの?」
「…うそつき」
私は涙を流したまま、ライトくんを見る。
.