第19章 三つ子の母
「本気で私のことが好きだったら、ユイちゃんに愛してるなんて言わないっ!」
「…なーんだ。聞いてたんだ。んふ、やだなーお花ちゃん。いたなら入ってくれば良かったのに」
「ふざけないで!!」
弁解するどころか悪びれもせず言われ、更に怒りが込み上げる。
「ふざけてなんかないさ。けどキミがそこまで怒ってるってことは…ビッチちゃんにヤキモチやいたってことかな」
「違うに決まってるでしょ!?」
「あぁそれとも、ビッチちゃんみたいに耳元で愛してるって囁いて名前を呼んで欲しい…とか?」
「!」
「んふ…やっぱりそうなんだ。いいよ、キミが恥ずかしさで死にそうなくらい、たーくさん囁いてあげる」
「やめ……」
「…愛してるよ───メグル」
耳元で囁かれた甘い声と言葉。いつもなら恥ずかしさでどうにかなりそうだが、今はただ、残酷な愛の言葉に聞こえる。
「やめて……」
「愛してる」
チュッ
「や、だ……」
「好きだよ」
チュッ
「うそつき…」
「だいすき」
チュッ
ライトくんは耳や頬にキスを落とす。そうやってユイちゃんにも言ったんだ。たくさんキスをして、愛を囁いて、何度も、何度も…。
「やめてよ…」
これ以上、私を傷つけないで
「お願い…やめて…もう部屋から出て行って」
「……………」
「ライトくんなんか…きらい」
「キライなのにいつも流されちゃうのは、どこの誰だろうね?」
「!」
「ボクに抗えないのはキミ自身なのにさ」
「そんなこと…」
「嫉妬で狂いそうなほど、ボクが好きなんだね、キミは。」
「…好きじゃない。もう…ライトくんの言葉は信じない」
ポロポロと涙が溢れ続ける。
「そういう顔も似合うね、お花ちゃん。涙を流しながら憎らしげにボクを睨むキミも好きだよ」
「っ、やめて…!!」
顔を近付けてキスをしようとするライトくんの口を手で押さえる。
「キスしないで…」
「ビッチちゃんと唇を重ねたから?」
「……………」
「キミとキスをしておいて、他の子にもキスをするような男は最低だって?」
「本当に最低…っ」
「んふっ…じゃあ殺す?」
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