第19章 三つ子の母
『(静かに話していたかと思えば、突然怒り出す。こういうヒステリックな部分を見ると…何故かカナトくんを思い出す。)』
『許さない!!あの人の心も視線も全て奪ったあの女を絶対に許さないわ!!』
『…呪いを掛けた奴の名前を教えて』
『…嫌よ。誰が天使なんかに教えるもんですか。あぁ、その顔を見てるだけで腹が立つ!』
『(会話にならない…)』
すると彼女は訝しげな眼差しを私に向ける。じっと見られるその眼に、居心地が悪くなり、逃げたくなった。
『アンタの血、変ね?』
『!』
『……………』
何かを考え込み始めた女性は、その答えに辿り着いたのか、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに可笑しそうに笑い始めた。
『フフ…フフフ!そう…アンタ…もう手遅れなのね。道理であの子の匂いがするかと思えば、アンタの身体に魔族の血が流れてる』
『っ!!』
『可哀想に。よりにもよってライトに捕まっちゃったのね。あの子のキバは気持ちがいいでしょう?』
『なっ……!』
『関わりだけかと思えば、繋がりも得たせいで、魔族の血まで混ざってる。アンタはあの子から離れられないわ』
『離れ…られない?』
『そうよ。それともアンタはあの子から…ライトから逃げられるって本気で思ってるの?』
『──思っ…てる。だって私はライトくんのことなんて…』
『本当に馬鹿で愚かだわ。あの女と違ってつまらなくてイライラする』
女性は苛立ちを露わにして、私をギロッと睨み付けた。
『あの子に吸い殺されてしまえばいいのに』
『誰…なの、貴女は…』
『あら?もう知っているのかと思ったけど?』
『(誰かに似ているとは思ってた…。目の色、髪の色、そして性格…。そう──三つ子だ。彼らに似てるんだ。やっぱりこの人が…ライトくん達の…)』
『───母親。』
『!』
『んふっ。本当に分かりやすいわね。まるであの女を相手にしてるみたいで気分が良いわ』
『(ライトくんと同じ特徴的な笑い方…)』
彼女の纏う雰囲気に怖くなって後ずさる。
『この際アンタでいいわ。あの女があの人の手によって殺された今、復讐する相手がいなくて困ってたところなの』
『復讐…?』
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