第2章 悪戯好きのトラブルメーカー(√)
「ピイピイ喚くなっての。文句なら後で聞いてやる。今は…オマエのこの柔らかい肉の感触と…血の味を楽しませろよ」
騙して血を吸ったアヤトくんは許せないけど、あの後ちゃんとコウモリを追い払ってくれた。
◇◆◇
「(うわぁ…不気味なところ…)」
アヤトくんに呼び出された私は、蝋人形が並ぶ部屋へとやって来た。燭台だけで照らされた部屋は薄暗く、いかにも何か出そうな雰囲気だ。
「あ、アヤトくん…?」
少し震える声でアヤトくんの名前を呼ぶも、本人は出てこない。
「(呼びつけた本人がいないってどういうこと?私だって暇じゃないのに。)」
勝手に帰っても良かったが、アヤトくんに怒られたくもないのでもう少し待ってみることにした。
「ねぇ、アヤトくん!いるのー?」
とりあえず探すが見つからない。
「うーん、やっぱり返事がない…」
あんまり長居したくないんだけどな…
その時、微かに物音が聞こえた。
「アヤトくんなの?」
足音…こっちに近づいて来てる…
「アヤトくん?」
ホッとしたのも束の間、アヤトくんじゃないと知る。アヤトくんよりもっと大きい。じゃあ誰なの…?と不安な顔を浮かべるが…。
「みゃああああっ!!」
私はおかしな悲鳴を上げた。
「(ろ、蝋人形がううう動いてるっ!!)」
怖くなってその場に頭を抱えて蹲る。
「や、やだ…こっち来ないで…」
カタカタと小刻みに身体が震える。段々と近付いてくる蝋人形に怖くなって涙を浮かべた。
「むむむ無理無理ぃー!!何で蝋人形が勝手に動いてんの!?オバケ!?オバケなの!?私取り憑かれる!?だ…誰か助けて!!か…母様っ!!」
「ぷっ……」
「……え?」
「アッハッハッハッ!『母様』だって!オマエ、アレか。マザコンってヤツかよ!?」
「あ、アヤトくん…!」
蝋人形の正体がアヤトくんだと分かり、私の体から力が抜け、地面にへたり込む。
「あー、面白ぇ。まさかリアルに親に助け求めるヤツがいるとはな。しかもパニクって独り言でけーし。相変わらず泣き虫だし?」
「い、今の…アヤトくんが動かしてたの!?」
「他に誰がいんだよ?バッカじゃねぇの?」
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