第2章 悪戯好きのトラブルメーカー(√)
「きゃ…い、痛…!」
逃げないように私を前から抱きしめると、アヤトくんは首元に顔を埋め、牙を立てた。
「ん……っ……」
「や……っ!」
「…ククッ、オマエの血ってホント食欲そそられるぜ。今日はチチナシの血は吸えなかったからな。オマエがいてくれて助かった」
「は、放し、て…!」
「なんだよ、オマエが誘ったんだろ?遠慮すんなって。そうだ、コウモリの毒もオレが吸い出してやるよ」
「な、何でそういう話になってるの…!?」
「毒で死にたくなきゃ大人しくしてろ」
「あ……っ!」
「えっとぉ?このあたりか?……んっ……」
アヤトくんがコウモリに引っかかれた跡の上から牙を立てて、血を吸い出す。
「…毒を吸い出すなんて危ないよ」
「あぁ?」
「アヤトくんまで毒にやられちゃう…」
「……っは。この状況でオレの心配かよ?オマエ、オレのこと嫌いなんじゃなかったのか」
「好きでは…ないけど。でも…私のせいでアヤトくんが辛い思いするのはやだよ…」
「安心しろ。毒にやられるほど柔な身体してねぇよ。んっ……」
「……んっ。平気?大丈夫…?」
「………。平気だし大丈夫だから大人しくしとけ。このアヤト様がコウモリの猛毒程度でヤられるはずねぇだろ」
「な、治るかな…?」
「おー治る治る。そのために今、こうやって血吸い出してやってんだろ」
「(あれ…?でもコウモリが触ったのって…。…違う!逆の脇腹だ!)」
私は唖然とした顔でアヤトくんを見た。
「も、もしかして…」
「ククッ、ようやく気付いたのかよ?」
「やっぱり…!爪の跡があるなんて嘘だったんだね!?」
「ついでにソレが毒持ってるっつーのも嘘だっての」
「信じられない!!酷すぎる!!」
「バーカ、こんなの騙される方が悪いっつの。少しは疑えよ、バカ」
「に、二回もバカって言った…!」
悔しくなり、涙目でアヤトくんを睨む。
「本気で毒で死ぬかもって思ったのに!!アヤトくんは酷すぎる!!」
「へーへー、そりゃ悪かったなー」
「全然悪いと思ってないでしょ!!」
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