第2章 悪戯好きのトラブルメーカー(√)
布団をめくったアヤトくんが呆れ顔で言った。アヤトくんの後ろから恐る恐る顔を覗かせてベッドに目を遣ると、確かにそこに小さな黒いコウモリがいた。
「オマエ、こんなんが怖いのかよ?」
「怖いものは怖いの!」
「ハハ!ダッセェ!」
「ダサくない!!」
こっちはビックリしたのに笑うなんて!
可笑しそうに笑っているアヤトくんを涙目で睨む。
「オマエさ、あのコウモリに触られたの?」
「え…?う、うん。いつの間にかベッドに入ってたみたいで…」
「ドコ?」
「脇腹のあたり…だけど」
「見せてみろよ」
「あ…やっ!」
容赦なしにパジャマを捲り上げるアヤトくんに驚いて恥ずかしさで顔を赤く染める。
「あ、アヤトく…」
「あー、こりゃやべぇな」
「…な、何?」
「引っかかれた跡がある。あのコウモリの爪ってさ、猛毒持ってるんだぜ?」
「え…!?」
小さなコウモリが宙を飛び、バサバサと私とアヤトくんの周りを飛び回る。
「ああ…アイツもオマエの血に魅せられたか?まだ狙ってるみたいだぜ?」
「や、やだ…っ!!」
コウモリが怖くてアヤトくんを見る。
「ア、アヤトくん、助けて…!」
「何でオレ様がオマエの部屋に入ったコウモリを追い払わなきゃなんねーんだよ」
「そんな無慈悲なこと言わないで!」
「めんどくせーからヤダ。」
「アヤトくん!お願い!」
バサバサッ
「ひっ!?」
「おっと…!」
「アヤトくん!助けてよぉ…!」
半泣きの私を見て気分が良さそうにアヤトくんが笑う。
「ククッ、オマエ…今自分がどういう状況か分かってんの?」
「え…!?」
「首元をオレの目の前に晒してさ…誘ってんだろ?」
「誘ってないよ!怖いんだよコウモリが!ずっとこっち見てるし!」
「あんなの怖くも何ともねーだろ」
「あ、あんなの見たことないもん!」
「はぁ?コウモリ見たことねえの?」
「み、見たことないよ!そんなのいいから早くどうにかして…!」
「助けて欲しいなら食わせろよ」
「え……」
「今はあんま腹減ってねぇけどさ…オマエの血が目の前にあると吸いたくなるんだよ」
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