第2章 悪戯好きのトラブルメーカー(√)
もぞもぞと動くもなかなか抜け出せない。お腹に回っているアヤトくんの手を剥がそうとするが無理だった。すると噛みついていた口は離れたが、ますます強く抱きかかえられてしまった。
「すー、すー」
「(顔が後ろ首に埋まってる…)」
「ん………」
「(はぁ、今夜はこのまま寝るしかないのかな?アヤトくんと出会ってから、彼に振り回されてばかり。)」
「すー、すー」
「(でも…寝ている時だけは安心だ。襲われる心配も血を吸われる心配もない。)」
ズク…ッ
「…………っ」
胸が痛くなり、顔を歪める。
「(早く呪いを解いてくれる相手を見つけなきゃいけないのに、どうしてこんな目に…)」
心臓を蝕まれているような感覚に恐怖を憶え、夢の中の【誰か】を恨みながら、その日はアヤトくんに抱きしめられたまま、眠りについてしまった…。
◇◆◇
自室────。
「はぁ…今日は自分のベッドで寝れる!昨日はアイアンメイデンだったけどやっぱり自分の部屋のベッドで寝るのが落ち着くよね」
ぽふんっ
「柔らかい!枕がある!暖かい…」
へにゃっと緩んだ顔で笑いながら目を閉じる。寝心地の良いベッド。さすが逆巻家。これなら今夜はいい夢が見れそう…と思いながら眠ろうとする。
「(ん……?)」
突然の違和感に目を開けた。
「な、何!?」
脇腹のあたりを何かが触っている。驚いた私は慌てて布団をめくり、その正体を確かめる。
「……っひぁぁぁああ───!!」
私の悲鳴を聞きつけたアヤトくんが部屋に入って来て、楽しそうな声で言う。
「なんだなんだぁ?何が起こりやがった!?」
私はすぐにベッドから飛び降りてアヤトくんに抱きついた。
「うぉ!?…なんだよ、オマエから抱き着いてくるなんて…今日はヤケに積極…」
「あああアヤトくんっ!!」
「ぷっ!オマエすげー顔になってんぞ!」
「笑ってないでベッド…っ!」
「……あぁ?」
「わ、私のベッドに何か黒いものが…!」
「はぁぁ?なんだそりゃ?」
「いいから見て!早く見て…!」
「っ押すんじゃねえ。ったく…。なんだよ、ただのコウモリじゃねえか」
「コウモリ…?」
.