第17章 ハジメテの痛み
【学校の廊下】
「(……?誰だろう。音楽室からピアノの音が聞こえる…)」
その戦慄は、とても哀しい音色だった。それと同時にもう一つの知らない感情が芽生え、私はぐっと顔をしかめる。
「…この音色、初めて聴くのに…どうしてだろう…すごく嫌な気持ち…」
でも…まだ聴いていたい
私はその音色に誘われるように、音楽室へと吸い寄せられた。
「お花ちゃん?」
「っ!?え?なんで…?」
音楽室の扉を開くと、そこにいたのはライトくんだった。
「んふ。どうしたの?そんなに目を白黒させて」
「ピアノの音がして…」
周囲を見渡すもライトくんと私以外、誰もいない。つまり、あの哀しい音色を奏でていたのは…。
「あの…さっきからずっとピアノ弾いてたのって…」
「ボクだよ。キミが来るかどうか、試したかったのさ」
「また…何か、魔法とかそういうの?」
「違うよ。ただのピアノさ。ただのピアノだけど…この曲はね…ボクにとっては特別なんだよ」
「どういう意味?」
「そのままの意味さ。それ以上でも以下でもなく…ね?」
「(意味深な言い方…いつも言ってる“あの人”と…何か関係があるのかな。)」
でも…あのピアノの曲、どこかで…
「でも、それで私がここに来るかどうか試すなんて、来なかったらどうしてたの?」
「どうするも何も、こうして来たじゃない」
「そうだけど…本当は来るってわかってたんじゃ?」
「んふ。そうかもね。なぜだろうねえ。なんとなく、直感ってやつかな…まあ、ただの気まぐれだからどっちでも構わなかったけど」
椅子から立ち上がったライトくんはこちらに歩み寄って来る。それでも私は先程のピアノの曲が気になっていた。
「(なんだろう?何か…引っかかる…)」
思い出せそうで思い出せない。
「…ライトくん、もう、ピアノ弾かないの?」
「何?弾いて欲しいの?」
「…うん。できればもう少し聴かせてほしいかも」
「そんなに気に入った?」
「…というより、昔どこかで聴いたことあるような気がして…」
「…この曲を?ビッチちゃんならこの音色に魅せられる気持ちは分かるけど。お花ちゃんまでこの音色に魅せられるなんて…」
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