第17章 ハジメテの痛み
「っ…助けて…ライトくん…!!」
その瞬間、身体が持ち上げられた。
「っ………!?」
「はい、助けたよ」
ライトくんに抱き上げられ、自然と彼を見下ろす体勢になる。驚いた私だったが、すぐに顔を歪め、死んでしまうかも知れなかったという恐怖で涙が零れた。
「ふっ…うぅ…ひっく…」
服も髪もびしょ濡れで、水滴がポタポタと落ちる。カタカタと震える私はライトくんの肩に手を置き、目を瞑って泣き出す。
「ほーら、もう大丈夫だってば。そんなに泣かないでよ、お花ちゃん。」
「も、元はと言えば…っく…ライトくんが…引っ張ったりするから…でしょ…っ?」
「それはお花ちゃんが強情だからだよ。素直に言うこと聞いてれば溺れずに済んだかも知れないのにさ。……んっ……」
「んぅ……っ」
「ちゅっ…ん…ん…っはぁ…」
「んんっ…ふ…あ、ん…っ」
唇を重ね、キスを繰り返すと、次第に涙は引っ込んだ。唇を離すと、ライトくんは笑って言った。
「んふ。感謝してよお花ちゃん。ボクはまだキミを生きる屍にはしたくないからさ」
「……………」
「ほら、もう一度してあげる……ンッ……はぁ……チュッ」
「んっ!」
「んふ…こうしてヴァンパイアの吐息をもらえるなんて…ありがたく思ってね…んっ…」
「んんっ…!!はぁ…はぁ…」
「っ……チュッ……少し、落ち着いたかな?」
「落ち着いた…ありがとう…ライトくん」
「んふふ。どこまでお人好しなんだよ。元々キミをこんな目に遭わせたのは、紛れもなくボクだよ?」
「でも…助けてくれた。ライトくん、本当は私が助けを求めなくても…今みたいに助けてくれたでしょう?」
「自惚れさんだなーお花ちゃんは。今のは気まぐれで助けただけ。本当は放置してキミが死んだら仲間にしたって良かったんだけど」
水音をさせながら、ライトくんは私の頬に触れる。
「ボクはどうも、意外に生きてるキミのこと気に入ってるみたいだよ。ま、特にキミの血の味がね…」
「(私…ライトくんに殺されかけたのに、何でお礼なんか言ったんだろう。ライトくんが溺れた私を見殺しにするはずないってどこかで確認してたのかな…そうだとしたら、ライトくんの言う通り、本当に自惚れだ…)」
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