第16章 呪われた花嫁
「(…あれが私の本心だなんて…そんな…そんなわけない。きっとあれは、あの飲み物のせいに決まってる…)」
───きっと、そうに決まってる。
「(天使が穢れた感情を…持ってはいけない。あんな…は、はしたない姿…。)」
そんな自分に対して嫌悪感を抱き、リムジンから下りて自分の教室へと向かった。
◇◆◇
【図書室】
「(借りてた本の返却日、今日までだった…)」
図書カウンターで本を返却した後、新しい本でも借りようかと“おすすめの本コーナー”というポップが設置された本棚を見つける。
「どれも面白そう。あ、この本…前に友達が面白いって言ってたな。借りてみようかな?」
その本を本棚から抜き取り、カウンターに行こうとした時、ふと視界に、珍しい花の図鑑という本が目に入る。
「こんなのまであるんだ…」
気になった私は持っていた本を机に置き、花の図鑑を手に取った。
「(前に発見した不思議な薔薇のことも載ってたりしないかな…?)」
ライトくんに誘われて薔薇園で発見した、緑と水色の美しい薔薇。周りは赤い薔薇ばかりなのに、あの一輪だけ色の混じった薔薇だった。
「(すごく綺麗だったな。)」
パラパラとページを捲り、手を止める。
「…あった。この薔薇、間違いない。あの薔薇園に咲いていた二色の薔薇だ。」
さすがは珍しい花の図鑑。本気で載っていると思わなかったから少し驚いた。
「えーっと…“ティヴェラ”。『ふたつの薔薇の品種を交配させ、世界にひとつしか存在しない二色の色が交ざった薔薇。奇跡の薔薇とも言われている』……そんなに凄い薔薇だったの!?」
ひとつしか存在しないって…あの薔薇が?しかも奇跡の薔薇が逆巻家にあるって…。
「恐るべし逆巻家…。あ、花言葉も載ってる。えーっと……、っ!?」
私はティヴェラの花言葉を確認した途端、バタンッと本を閉じ、本棚に戻した後、カウンターで本を借り、慌てるように図書室を出た。
◇◆◇
【繁華街】
「(こうして街中に出るのも久しぶりだな…。今はひとりだから、安心する。この隙に…逃げちゃえばいいんだろうけど…)」
あの頃の日常を取り戻したい。逆巻兄弟の三つ子に出会う前の…あの平穏な日々に。
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