第16章 呪われた花嫁
「キスの痕がないからねえ。んふ。アイツらは人一倍独占欲が強いからさ。自分のモノには必ず痕をつけるんだ──こんな風に……んっ……」
「やめっ…!!」
うなじにキツく吸い付かれ、チリッとした痛みが襲う。
「んっ……っと、よし、これでいいかな。ボクの愛の痕がしっかり付いた」
「(これじゃ髪で隠れない…)」
いつもはユルい三つ編みにしているが、ライトくんが付けた痕は三つ編みじゃ隠せない場所だった。
「(非道い…こんなの。)」
「──いいか?キスマークを隠そうとして髪を下ろしたりするなよ?オレのモノですって主張して歩くんだ」
「そんなの無理に決まって…!」
「んふ。そうしたほうがお花ちゃんの望み通りになるよ」
「望み、通り?」
「他の男が寄ってくるからねえ?人のモノが欲しくなるのは…人間もヴァンパイアも一緒なのさ。でも…他の男に許したら、どうなるか分かってるよね?」
「っ………」
「ボクはねえ、キミを焦らして焦らして美味しくなるまで、寝かせているんだから。丁度、葡萄酒みたいにさ。待てば待つほどに、その味は深みを増す」
後ろから顎を強く掴まれ、鏡を見るように固定される。
「ほら、良く見てよ…自分の姿をさ。どうなってる?」
「い、たい…!放して…」
「痛いじゃないでしょ?服もビリビリに破られて…すんごいことになってるよねえ?んふ。」
「(誰のせいだと…!)」
「このままじゃあ、学校に行けないけど…でも、これのほうがより多くの男を引き寄せられるかなあ」
「っ……何、言って……」
「お花ちゃん、嬉しいでしょ?キミは言うなれば、次々とミツバチが訪れる大輪の花のような存在なのさ。それもいいと思わない?んふ。」
「(やっぱり…ライトくんはおかしい。そもそも出会った時から危険な人だと分かってるけど…このまま私は彼に──ううん、まだ諦めちゃダメだ。なんとかしないと…)」
甘く溶かされ、堕ちていく自分の末路に全身を恐怖でゾッとさせる。ライトくんに堕ちてはいけない。そう…まだ、諦めるには早すぎる。
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