第15章 生きる意味
「っ…………」
殺すと言われ、緊張で顔が強ばる。
「さあ、おいで…お花ちゃん。キミに…この世の快楽と欲望の全てを…教えてあげるよ」
掴んだ顎の親指で、ライトくんは怖がる私の頬を撫でた。
「(助けて…このままじゃ私、ライトくんに堕ちちゃう。)」
絶対に逃がさないという強い意志の瞳に、冷たくなった指先をギュッと握りしめる。
「(私を縛らないで。自由でいさせて。私は貴方に…捕まりたくない───。)」
◇◆◇
【天界】
『ねぇ、母様。』
『どうした?私の可愛い天使』
『魔界って怖いところなの?』
『!』
白くて大きな羽根を持つ、美しい顔立ちの女性は、膝に乗る小さな羽根が生えた少女の質問に驚いた様子で目を見開いた。
『どうして魔界を知っているんだ?』
『んとね…お部屋から出た時に使用人達が話してるのを聞いちゃったの。魔界は怖いところだって』
『(あれほど話題に出すなと注意したのに。後で呼び出す必要があるな。)』
『母様?』
『そうだな、魔界は怖いところだ。私たち天使にとって悪影響を及ぼす場所なんだよ』
『あくえーきょー?』
『悪いモノを引き寄せてしまうんだ。彼処はお前の運命を狂わせる。興味を持ったところで"そこ"に幸せはない。だから魔界のことは忘れろ。母様と約束できるか?』
『うん…わかった』
『いい子』
少女は残念そうな顔をしていたが、母親を困らせたくない一心で、しぶしぶ頷いた。そんな少女の頭をミカエルは優しく撫でる。
『(私の宝物。この子だけは何があっても守らなければ。"アイツ"に見つからないように…上手く隠す。この子には手を出させない。)』
『母様?どうしたの?』
『私の天使は可愛いなと思ってね』
『でもお顔が怖いよ…?』
『怖がらせてしまってすまない』
『ううん!母様のこと怖いなんて思わないよ!だって母様はすごく優しいもん!私の自慢の母様だよ!』
『ふふ、本当に愛らしい。母様は幸せ者だな。可愛い天使が傍にいるだけで一瞬で元気になる』
『じゃあもっと母様を幸せにしてあげるね!』
にへぇーっと緩んだ顔で笑う少女を愛おしげに見つめるミカエル。
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