第14章 愛しの"アノ人"
「またえっちな気分にさせてあげるよ?」
「い、いい!いらない…っ!」
「くくっ…そんなに暴れないでよ。さもないとお花ちゃんのこと、本当に溺れさせちゃうよ?」
「っ………!」
“本当に溺れさせちゃうよ”
そう言ったライトくんの声が低くなる。目が本気のライトくんに私は怖くなり、口を噤んだ。
「よーやく黙ったね…フフフ。あ、髪のリボンが水を含んでぺしゃんこになってる」
「や、だ……」
リボンに手を伸ばすライトくんに嫌だと首を振る。
「ボクまだ何もしてないんだけど?ま、これからお花ちゃんはボクとイイコトするんだけどね」
しゅるりとリボンを解いてしまう。
「っ…こんなことして、楽しいの?」
「あったりまえでしょ。楽しくなきゃこんなことしない。ボクはね、こう見えても面倒ごとは嫌いなの。」
冷たい指先が頬に触れる。
「全ては楽しければいいんだ。何もかも…本当に、何もかも、ね?」
「(ライト、くん…?なんだか、いつもとちょっと雰囲気、違うような…)」
不安げに彼の名前を呼ぶ。
「ライト、くん?」
「──くすっ。なーんてね?」
「えっ!?んんっ!?」
「んっ……ちゅっ」
「(またキス、されてる…!)」
「んんっ……ん……」
「(うぅ、キス、気持ちいい…けど…!)」
このまま流されるわけには…!!
「っ……や……めて……っ!」
「っ……!」
「(ど、どうしよう…唇、噛んじゃった…)」
唇を噛まれたライトくんはキスをやめてくれたけど…私の心臓は、ライトくんの変わった目つきを見て、ドクンッと嫌な音を立てた。
「痛いな…まさか唇を噛むなんてね…くくく。久しぶりにボクも一応、生きてる感覚を味わえたよ」
「っ……ら、ライト、くん…」
「……………」
「あ、の……ご、ごめん、なさ……」
「いいんだよ。ボクらはさ、所詮は“生きる屍”なんだ。例え…こんな風に、ほら…血が、紅くても…ね?」
「っ……な、に?」
血のついた指を差し出される。
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