第14章 愛しの"アノ人"
「お花ちゃん!それって…もしかしてエプロンってやつ?」
「そ、そうだけど…」
花柄のエプロン姿の私を見て、ライトくんは含み笑いを浮かべる。
「ふーん…へー…なかなか、キュートだね?」
「…エプロン、見たことないの?」
「んふ。ボクの"アノ人"はおよそ、家庭的な人じゃあなかったからね。新鮮だなあ。とっても似合ってるよ、お花ちゃん」
「あ、ありがとう…」
「照れてるお花ちゃんも可愛いなぁ」
本気なのか冗談なのかイマイチ分からないライトくんの言葉に不覚にも恥じらいを持ってしまう。
「ね、お花ちゃんは料理、得意なの?」
「得意ってよりは作るのが好きなの。レシピ本を買って色々作ったりするよ」
「ボクもお花ちゃんの手料理食べてみたいな」
「…ヴァンパイアは食事しないんでしょ?」
「他のヤツラは知らないけど、確かにボクはお腹が空いたら血を飲めば満たされる。でも、お花ちゃんの作ったご飯は別。」
「何で?」
「好きなコが作った料理だもの」
「は?」
「んふ。お花ちゃん、変な顔。」
「…ライトくん、私のこと好きなの?」
「えー、今更気付いたの?ボク、結構前からアピールしてるつもりだったんたけど?」
ライトくんは信じられないという顔で私を見た。いつもの冗談か、それとも本気で…。まぁどちらにしろ、拷問部屋の時といい、今までの経験からして、ライトくんの私を好きという言葉は、信じられない。
「…お花ちゃん、凄く迷惑そうだね。その蔑むような目で見られると…はぁ…興奮しちゃうよ」
「変態!」
「ボクにとっては褒め言葉だって知ってるクセに♪」
ダメだ。これ以上貶してもライトくんを喜ばせてしまう。
「そういう冗談はやめて」
「つれないなぁ。こんなにお花ちゃんのことが好きなのに、ボクの気持ちを拒絶するなんて。もしかして恥ずかしがってるのかな?」
「どこをどう見たら恥ずかしがってるの。本気じゃないのに揶揄わないで。ライトくんの言葉は真に受けないって決めてるから」
「本気だったら認めてくれるの?」
「何を?」
「ボクが本気でキミを好きだって気持ち。本気だったら、信じてくれるんでしょ?」
「……………」
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