第12章 誤解とすれ違いの誕生日(❤︎)
「例えば、カナトくんが大切にしてるテディを誰かに取られちゃうのは、相手を殺しちゃうほどイヤでしょ?」
「まぁ、そうですね…」
「大切だから、誰かに取られるんじゃないかって不安になるし、奪われたくないから傍に置いておく…」
「……………」
「大切であればあるほど…ね?……んふっ」
「ライトは、彼女が好きなんですか」
「!」
「アヤトに彼女の話をしている時、どこか寂しそうに見えました」
「……………」
カナトにそう聞かれ、ライトは微かに驚いた顔をしたが、すぐにふと切なげに笑い、アヤトが去って行った方を見つめる。
「もうお花ちゃんで遊べなくなっちゃったからちょっと寂しいよね。横からちょっかい出してアヤトくんに本当に殺されたくないし」
「質問の答えになってません」
「ねぇ知ってる?カナトくん。本当はアヤトくんよりボクの方が先にお花ちゃんを見つけてたんだよ」
「……………」
「でも彼女の目はアヤトくんに奪われちゃったわけだ。」
「じゃあ無理やりでも彼女を君の物にしたらいいんじゃないですか?」
「そうしたいのは山々なんだけどねー…アヤトくんと引き離したらボクがお花ちゃんに殺されそうだから潔く諦めることにするよ。んふっ……」
ニコッと張り付けたような笑みを浮かべるライトだったが、その声は切なげだった。
◇◆◇
【リビング】
「おい、オマエら!」
「なんですか、騒々しい。大きい声を出さないでくださいよ」
「地味子のヤツ見てねえか」
「はあ?オレは見てねえ。つうか、何そんなに焦ってんだ?」
「っ……べつに……焦ってなんかねぇ!」
「───どうですかね。」
「あぁ!?」
「どこからどう見たって焦りまくってるくせに、否定すんなよ…だっせぇ」
「あぁ?テメェ…やんのか!?」
「フン、ちょうど暇してたとこだ。いいぜ、相手になっても」
「ちょっと、止めてください。ケンカならここではなく、外でお願いしますよ。」
険悪なムードの二人にレイジは深い溜息を吐いた。
「はぁ…現当主がこの有様では、家の修繕費も馬鹿になりませんね…」
「チッ!嫌味かよ…!もういい!」
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