第12章 誤解とすれ違いの誕生日(❤︎)
【廊下】
「ここにもいねえ……くそっ!!」
「あれ〜?アヤトくん。どうしたの?」
「…機嫌が悪そうですね」
「もしかしなくても、お花ちゃん関係?んふ」
「おいオマエら、地味子のヤツ見てねえか?」
「んんー……ボクは見てないなあ。カナトくんは?」
「僕も知りません。ねえ、テディ?」
「チッ…それもそうだな。オマエらがオレのもんだと分かってて手を出すわけねぇし」
「……………」
アヤトの言葉にライトは黙る。隣にいるカナトが含み笑いを浮かべた。
「それはどうだろうねえ、テディ。ふふふっ……」
「あぁ!?どういう意味だ!」
「結婚しているからって、他の誰かと仲良くしない証拠はないってことですよ」
「お花ちゃんは凄く可愛いから彼女を好きになる男なんて世界にごまんといるんだよ?んふっ……」
「っ………!」
アヤトの顔に焦りの色が垣間見えた。
「そうですよ。だって彼女──メグルさんは気持ちいいことが、大好きな人じゃないですか」
「カナトくん、ストップ、ストップ!それ以上は黙った方がいいよ。アヤトくんの鉄拳制裁が下っちゃう」
アヤトは怖い顔でカナトを睨んでいる。
「…らしくないですね、ライト。こういうことはいつもだったら君が言うのに…」
「んふっ。あまりにもお花ちゃんに必死なアヤトくんが、哀れに思えてさ…」
「……チッ……。とにかく、アイツ見かけたら教えろよ。こっぴどく仕置きしてやるぜ!」
「フン……」
「ああ、そうそう…居間にレイジがいたから聞いてみれば?」
「……ああ、そうする」
不機嫌そうな顔をしたまま、アヤトは居間へと向かって行った。
「んふふっ……」
「……?ライト……?どうかしたんですか?」
「ううん。なんでもないよ。アヤトくん…お花ちゃんを手に入れて変わったなぁって」
「そうですか?」
「なんだか、常に怯えて、焦ってる。…大事な物が出来ると、臆病になるものなんだね。失うことを恐れるあまりに…んふ。」
「…僕にはよく分かりません」
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