第1章 PROLOGUE-はじまり-
「ひ、酷い!!何も壊すことないでしょ!?」
「あ"ぁ?」
「友達との写真とかメールとか全部パァだよ!!どうしてくれるの!?」
「そんなに言うならこの残骸かき集めてテメェでどうにかしろよ」
悪びれもしないスバルくんの態度に流石の私も怒りが抑えられず、キッと睨んだ。
「かき集めたってこんなに粉々じゃ直らないよ!!データも全部吹き飛んでるし!!というか壊したのあなたですよね!?」
「アヤトに盗られたお前の責任だろ。壊されたからって八つ当たりすんなよ。相変わらず喧しい女だな」
スバルくんが床に散らばる携帯の残骸を足で踏みつける。
「(アヤトくんが勝手に盗ったんだよ!!しかも八つ当たりって何!?自分の携帯壊されて怒るのは当然なんだけど!!)」
「何だよその目は…気に入らねぇな。言いたいことがあるなら言えよ」
「べ、弁償してもらうから…!」
「あ"ァ!?」
「ひああ!?ごめんなさい嘘ですぅ…!!」
今にも本気で壊しにきそうなスバルくんの鋭い眼光と苛立つ声にビビり、涙目になりながらも首を左右にブンブンと振った。
「まあまあ、お花ちゃん。もう観念してここに住んじゃいなよ。ビッチちゃんもいるんだし、女の子は一人じゃないよ」
「(そういう問題じゃない!)」
「それに携帯なんて必要ないでしょ?」
「あ、ありまくりだよ!!」
「これからはボクらとも仲良くしようね。ね、可愛いお花ちゃん♪」
「仲良くなんてしない!」
「じゃ、ここから出て行く?」
「え…帰してくれるの?」
「だって君は帰りたいんですよね?」
「う、うん!帰りたい…!」
「そうですか。じゃあ、丁度いいですね」
「な、何が丁度いいの?」
「僕ね、さっきからもうお腹ペコペコなんですよ…」
「っ!」
私はカナトくんの言いたい事が分かり、サッと顔を青ざめる。
「だから帰してあげる代わりに…」
「絶対にダメ!!」
「くすっ。まだ何も言ってないのに、君は僕がこれからすることを分かってるんですね。彼女より物分りが早くて助かります」
「待ってカナトくん…」
じりじりと近づいて来るカナトくんが怖くて声が震える。
.