第1章 PROLOGUE-はじまり-
「お花ちゃんはボク達みたいな存在を知ってたんだねー。だから慌てて逃げ出そうとした。もう逃げられないって分かってるのにどこまでも抗うんだね、無駄なのにさ♪」
「っ…………」
ライトくんが残酷な笑みを浮かべ、まだ諦めようとしない私に向かって愉しげに声を弾ませた。
「つーかいつまでグダグダ言ってんだ。拒否する選択肢はねぇんだから素直に受け入れろよ。うぜぇ。」
「(受け入れられるか!)」
「生憎この部屋にはまだ空きがあります。すぐに貴女の荷物もこちらに手配しましょう。飲みかけの紅茶を残す貴女には躾が必要みたいなので」
「(アヤトくん達は私をここから逃がす気はない。でも彼らは魔族…しかもヴァンパイアだと知ってしまった以上は…絶対に彼らと関わることはできない!!)」
助けを呼ぼうと鞄にしまってある携帯を探すも…
「(あれ?携帯が…ない?)」
「おい、オマエの捜し物はこれか?」
「それっ…!!私の携帯!返して!!」
アヤトくんに駆け寄り、手を伸ばす。
「っと。ハハッ、そんな小せぇんじゃ届かねーよ!返して欲しけりゃ取ってみろ」
「(そういうところがいじめっ子!!)」
背伸びしても届かず、楽しそうなアヤトくんを見て悔しくなった。
「返してって言ってるでしょ!?」
「へへっ…どうすっかなあ?」
「いい加減にしてよ!!そうやってアヤトくんが意地悪ばっかするから嫌いなの!!」
「なんだよ、その言い草はよ。オレは親切にも拾ってやったんだ。それが拾い主に対するオマエの礼儀なのか!?」
「っ………!!」
怒られて身体を恐縮させる。
「おい、アヤト。そいつをオレに貸せ」
「あぁ?」
「チッ…よこせってんだよ!」
アヤトくんの手から奪った携帯がスバルくんに渡り、私は嫌な予感がした。
「…何する気?」
「こうするん…だよ!」
バキッと壊された携帯の残骸がバラバラと床に砕け落ちる。私は目を見開き、既に粉々になった携帯を唖然と見つめた。
「お前、さっきからうるせーんだよ」
「(わ、私の携帯…片手で壊された…!!)」
「スバルくんってば、確かビッチちゃんの時もそうやって壊したよねー」
「うるせえ」
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