第11章 ヴァンパイアの花嫁
「まぁ今となってはあの女などどうでもいい。こうして目の前に娘がいる。これは絶好のチャンス」
「……………」
「もうすぐでコーデリアは目覚める」
「!」
「あのとき見捨てた罪を貴様で償ってもらうぞ…!!」
彼の手が先程よりも強く首を掴む。
「うぐ…!」
「貴様の呪いは絶対に解けん。貴様を愛する者などいはしないのだからな」
「い、ゃ……っ!」
「あの女と同じ所に送ってやる───!!」
「…アンタの執念深さも相当だな、オッサン」
殺されると思った瞬間、アヤトくんの声が聞こえ、彼の手がピタリと止まる。
「チッ…アヤト!この、同族殺しめ…」
「(同族殺し!?)」
「…メグルをひとりにすれば出てくると思ったぜ」
「あ、アヤトく、ん……」
「メグル、こっちに来い」
「こ、の状態じゃ…む、り…っ」
首を絞める力が強くて呼吸すら苦しくなり、顔を歪めてアヤトくんを見る。
「チッ、仕方ねぇな」
シュンッ
「え……!?」
いつの間にかアヤトくんの腕の中にいた。
「っ、けほっ!うっ…けほっ!」
首絞めから解放され酸素を思いきり吸い込む。怖くて涙が溢れそうだったが、急に視界が真っ暗になる。
「オレ以外のヤツの前で泣くなって言っただろうが」
アヤトくんが手で目を覆ってくれた。
「っ、う…ん…っ」
「悪ぃけど今は自分で涙止めろ」
「だいじょーぶ…」
泣くもんかと必死に涙を止める。
「バカな……っ!他者の肉体を移動させるなど…!」
「分かってねぇな。コイツは天使だぜ?しかも相当な力を持ってる。瞬間移動なんて簡単だろ。それに…」
アヤトくんが覆っていた手を外す。
「オレの体には、コイツの血が巡ってるんだぜ?……んん……」
「あ……っ」
鎖骨辺りに唇を寄せ、軽く吸う。
「あ、アヤトくん…この人が言ってたことは本当なの…?」
「そうみてぇだな」
「だって、アヤトくんのお母さんは生きてるんじゃ…」
「…死んでるよ。────オレが、殺したんだ」
「なっ……!じゃ、じゃあコーデリアって人の心臓は今どこに…」
「チチナシだ」
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