第11章 ヴァンパイアの花嫁
「まさか…ユイちゃんの心臓が…アヤトくん達のお母さんの心臓…?」
「正解」
「(そんな…)」
「でもまさか、心臓を抜いて移植してたヤツがいたなんてなぁ?」
「……っ……」
「あのアバズレへの執着か…それとも、ヴァンパイアの長であるアイツへのコンプレックスからか…。ま、どっちでもいいや」
彼はどこか悔しさと憎らしさの混じった目でアヤトくんを睨みつけている。
「メグル」
「え?」
「…… は、…っ…」
「あ…っ!」
心臓の部分に…牙が…
「…ん…っ…」
「あ…んん…」
「コイツは…オレのもんだ。この血も、肉体も…心も、全て…っ」
「……っ……」
「…っ…はぁ。…すげぇ…少し天使の血を体に取り込んだだけで…今までとは比べもんになんねぇくれー漲ってくる…っ!」
「貴様…!」
「テメェのその執着はキケンだな。コイツはぜってーに殺させねぇ」
「(アヤトくん…)」
「…二度とメグルに手ぇ出せねぇように…殺してやるよ」
「………!」
「安心しろ。オマエの悲願はひとつだけ叶えてやる。…オヤジを玉座から引きずりおろして…ぶっ殺し…オレがヴァンパイアの長になってやるよ。アイツの血を使ってな」
「(ユイちゃんの血を…?)」
「その娘をあの方はご所望だ。悪いが横から奪わせてもらおう」
「…メグル、少し目瞑ってろ」
「あ、アヤトくんは…?」
「オマエを奪われるくれぇなら、いっそコイツを殺してオマエを守る」
彼を見ていた視線が顔ごとこちらに向けられ、アヤトくんが笑って言った。
「好きだぜ、メグル」
「…え?」
突然の告白に私は驚いて固まる。
「オマエの血も身体も心も、生意気で泣き虫で、嫉妬深くて愛が重いところも、全部ひっくるめて好きだ」
「!!」
「他の誰にもオマエを奪わせねえ。オマエは永遠にオレ様だけのもんだ」
「っ………」
「だからずっとオレ様の傍にいろ。オマエを愛せんのはこのオレだけだ。もう…どっちが先に告るとかどうでもいい。オレはオマエが好きだ」
アヤトくんの想いを知った途端、不安でいっぱいだった私の心が嬉しさで満ち溢れた。
.