第10章 歪な関係で私達は
「(気持ちよくて…何も考えられなくなる…。)」
私は観念して、瞳を閉じた。さらに深く、強く、求めるようなキス。
きっと今の私を見たら天界の人達は怒るだろう。魔族と関わりを持った私を蔑むだろう。
「(でも…愛してしまったんだもの。ヴァンパイアを。逆巻アヤトという人を。)」
だから今更、恋するのをやめろと言われても無理だ。私はアヤトくんに愛されたい。彼と一緒に呪いを解きたい。
「(許して…天使と魔族の恋を。)」
幸せになることを───……
◇◆◇
【ダイニング】
「…どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
レイジさんに紅茶を淹れてもらい、ぎこちない声でお礼を言う。
「…相変わらず奇妙な光景ですね」
「え?何が?」
「この状況ですよ。皆でテーブルを囲んでいるなんてとても気持ち悪いです」
「まったくだぜ」
「じゃあ、自分の部屋に戻ってくれてもいいんだよ?現にシュウやスバルくんは参加してないでしょ?僕は、ビッチちゃんとお花ちゃんと三人で、ティータイムを楽しもうと思っただけなんだから」
「バーカ。オマエがただ茶ぁしたいだけなんて、信じられるかよ!」
「ああ、それで見張りに来たの?ふふ、アヤトくんてば、ホンット、ヤキモチ妬きだね」
「はぁ?バッカじゃねぇの?」
「お花ちゃんがボクらに横取りされないか心配なんでしょ?隠さなくてもいいのに〜」
「喧嘩なら余所でやって下さい。せっかくのデザートに埃がつきます」
「なんだと!?テメェ…!」
「もう!カナトくんの言う通りだよ。せっかくなんだから、皆で美味しくいただこう?」
隣に座るユイちゃんが言った。
「これ、美味しいね。ユイちゃんが作ったんでしょう?」
「うん。ライトくんが買って来てくれたワッフルを、ちょっとトーストして、生クリーム絞ってみたの」
「…おいしそう」
「本当に美味しそう。ワッフルなんて食べるの久しぶり。生クリームも甘そう」
「ふふ、良かった」
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